部門賞

Home > 部門概要 > 部門賞 > 受賞一覧 > 第81期(2003年度)流体工学部門賞の選考 優秀講演賞の授与 > 一般表彰(フロンティア表彰)

第81期(2003年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

● 蔦原道久 教授 (神戸大学)
● 中野政身 教授 (山形大学)
● 渡辺敬三 教授 (東京都立大学)

目次にもどる部門賞一般表彰(貢献表彰)


一般表彰(フロンティア表彰)

蔦原道久 教授 (神戸大学)
授与式の写真

受賞理由:
 
数値流体力学の新しい手法である「格子ボルツマン法」について,新しいモデルの開発ならびに計算アルゴリズムの改良を行うとともに,この手法の応用として回転成層流への適用ならびに圧縮性モデルを用いた空力音の直接計算など,広くこの分野の発展に貢献した.

受賞のコメント:
  このたびは「流体工学部門」フロンティア賞という栄えある賞をいただくこととなり,喜びもひとしおです.また関係各位には深く感謝申し上げます.「フロンティア賞」受賞が私にとりまして,大きな喜びでありますのは,私自身あまり1つのことを深くやるということをせず,これは「何かあるな」ということを感じたテーマを追いかけてきたところがあり,大したことをやってきたとも思いませんが,こういった新しいテーマはむしろ基礎が大事で,常に基礎に戻るということに心がけてきた態度がある程度評価されたのではないかと思うからです.格子ボルツマン法という数値流体力学の手法をかじることにより,私自身は,流体というものの性質が以前よりは少し分かったような気分になっております.またこの手法は,非常に優れた利点を多々持っており,私としましてはすばらしいテーマをつかんだという気もいたしております.
  この受賞は,この研究を始めて以来の共同研究者ならびに多くの学生諸君の貢献の賜です.紙面をお借りしてお礼申し上げます.



一般表彰(フロンティア表彰)

中野政身 教授 (山形大学)
授与式の写真

受賞理由:
  ER・MR流体などの電磁レオロジー流体に関して,電磁レオロジー流体の創成,レオロジー及び流動特性の評価,その特性を活かした独創的な応用機器の開発を行うともに,国際会議,研究会,OSなどを積極的に開催し,新分野の開拓・発展に寄与した.

受賞のコメント:
  この度は,鋭意展開して参りましたER・MR流体などの電磁レオロジー流体に関する基礎科学から応用研究による新分野開拓への寄与に対しまして,平成15年度フロンティア表彰を賜り,大変喜ばしく光栄に存じます.
  ER(Electro-Rheological)・MR(Magneto-Rheological)流体などの電磁レオロジー流体は,外部電場や磁場の作用のもとでレオロジー特性が変化する機能性流体です.ER流体に出会ったのは十数年前に遡りますが,2枚の電極間にER流体が固まり,電場を切ると流れ落ちる現象を確認したときの感動は今でも忘れられません.ただ,その当時のER流体は分散粒子の沈降が著しく,実験中に粒子を均一に分散させるのに大変苦労したのが思い出されます.そのような訳で,まず機械屋からのER流体に対する要求を合成化学品メーカーに聞いていただき,応用に耐え得るER流体を共同でなんとか開発して,研究が著しく進展しました.MR流体の研究を手掛けたのは約8年前で,当時MR流体の開発・販売を始めた米国Lord社のDr. JollyとのMR流体の動的粘弾性に関する共同研究に端を発しており,いち早く日本にMR流体を紹介するとともに,MRダンパの開発に寄与する有意な研究成果を得ています.
  これまで一貫して,ER・MR流体の基本的なレオロジー特性(定常,ヒステリシス,動的粘弾性など)を明らかにして,その特性を活かした特徴的な応用機器(各種ダンパ,張力制御装置,ブレーキ,マイクロアクチュエータなど)の開発とその制御法を提案する研究を展開してきましたが,今後,今回の受賞を励みに,ER・MR流体の基礎流体科学の研究はもちろんですが,これらを活用した独創的な機器の実用化を指向した研究展開にも精進したく考えております.


一般表彰(フロンティア表彰)

渡辺敬三 教授 (東京都立大学)
授与式の写真

受賞理由:
  流体の摩擦抵抗低減の手法について長らく研究を続けて来たが,その方法の一つとして,固体表面を超撥水性壁とすることにより,流体との間にすべりを生ぜしめ,大きな抵抗低減効果をねらっている.また,そのメカニズムについての詳細な研究も行っている.

受賞のコメント:
  この度流体工学部門の一般表彰(フロンティア表彰)を受けたことは,私にとって大変うれしくまた光栄なことであります.私自身の研究課題は流体の抵抗減少効果に関して高分子溶液である非ニュートン流体から始め,混相流に移り,そして壁面を変化させる問題を経て,その研究対象への興味も流体の滑りによる抵抗減少効果へと変化してきました.結果として,この超はっ水性壁の抵抗減少効果に関する研究が今回の受賞に結びついたわけですが,本研究を進めるにあたって研究室のスタッフや多くの学生諸君の協力と企業の方々からの援助や幸運に恵まれたことは言うまでもありません.
  本研究結果は1996年のASMEの流体工学部門講演会における抵抗減少効果に関するシンポジウムで初めて国際的に報告されましたが,その総括のセッションにおいてこれからの注目すべき現象として取り上げられたことを,今懐かしく思い出します.   
  現在はマイクロマシンに用いられる微小な流路への応用を視野に入れながら,壁面近傍における流れのモデル化や抵抗減少効果を生ずる新しい機能性壁面の創成を試みています.この受賞を励みとして,今後共一層これらの研究に取り組んで行くつもりです.

更新日:2003.10.22