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第91期 (2013年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

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一般表彰(フロンティア表彰)


店橋 護(東京工業大学))

受賞理由:

 高精度のPIVを駆使して,乱流中の微細渦構造の存在を実験的に立証し,直接数値シミュレーションによりその普遍的構造を解明するなど,先駆的な業績を挙げた.


一般表彰(フロンティア表彰)


渡邉 聡(九州大学)

受賞理由:

 流体機械におけるキャビテーション現象に対して,実験・理論・数値解析を駆使する先駆的研究を行い,不安定現象におよぼす熱力学的効果などの応用上重要な多数の知見を導いた.

受賞のコメント:

 この度は,栄えある流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦頂きました方々,ご指導賜りました数多くの先生方,研究室スタッフ,そして何よりこれまで一緒に研究に取り組んで頂きました研究室の教え子諸君に深く感謝申し上げます.

  受賞の対象となりました流体機械のキャビテーション現象に関する研究は,母校である大阪大学での学位論文「インデューサの旋回キャビテーションに関する理論的研究」に端を発しております.流体機械の複雑な流れのキャビテーションを扱うということで一見難解な課題のように見えますが,恩師の辻本良信先生(大阪大学名誉教授)から特異点解析法を含む多くの理論・数値解析手法を教わり,物事を極力シンプルに考えその本質を見抜く理論解析の醍醐味を味わいました.現在の所属機関である九州大学への着任後は,上司であった古川明徳先生(現大分工業高等専門学校校長,九州大学名誉教授)から現象の実際を大事に扱う実験的研究の重要性を教わり,当時先生が幅広く展開されていた流体機械の内部流れ関連の研究テーマに参画させていただきました.ご存知の通り,古川先生は流体機械の複雑な内部流れの緻密な計測を得意とされる著名な先生であり,先生のご指導のもと翼・翼列周りのキャビテーション流れの計測など実験研究に着手するに至りました.一方,理論的研究では,大阪大学から宇宙航空研究開発機構へ移られた吉田義樹先生と一緒に仕事をする機会を得,当時はNASAの経験則が全てであったキャビテーションの熱力学的効果について,キャビテーション研究の世界的権威である加藤洋治先生(東京大学名誉教授)が発表された論文をヒントに,その旋回キャビテーション等の不安定現象に対する影響を解析的に明らかにしました.加藤先生からは,この研究を通じてキャビテーションの本質と実際に関して多くのことを学ばせて頂き,ときには激励の言葉も頂戴しました.

 このように多くの先生方からご指導を賜りました研究がこの度の受賞に結び付きましたことから,先生方への感謝の念に堪えません.一方で,流体機械のキャビテーション流れの解明という究極の目標にはまだまだであることから,この受賞は流体工学部門からの期待の籠った激励であると受け止めております.そのご期待に応え,少しでも流体工学の発展に貢献できるよう,決意を新たに研究に邁進する所存です.


一般表彰(フロンティア表彰)


深潟 康二(慶應義塾大学)

受賞理由:

 流れの制御,特に壁乱流の摩擦抵抗低減に関して,基礎理論の構築や進行波を用いた革新的な制御手法の研究を行い,この分野の発展を牽引する先駆的な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を授かり,大変光栄に存じます.関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます.

 私が流体に興味を持ったのは卒業研究の時で,東大・越塚誠一先生のご指導のもとで粒子法(現・MPS法)の開発に関する研究を楽しんでおりました.その後,スウェーデン王立工科大学(KTH)の大学院生の時に乱流と出会いました.

 受賞対象となった流れの制御の研究を始めたのは2000年,学位取得後に東大・笠木伸英先生の研究室で文部科学省開放的融合研究「乱流制御による新機能熱流体システムの創出」(2000~04年度)のポスドクとして働き始めた時でした.その当時は主にフィードバック制御による壁乱流の摩擦抵抗低減の研究を行っていたのですが,振り返って見るとそこで生まれた成果(構築した基礎理論と開発した直接数値シミュレーションコード)が現在の自分の全ての起源となっております.

 2007年に慶應に移り自分の研究室を持ってからは,上述の基礎理論の示唆に基づき,より実現可能性のある摩擦抵抗低減手法の開発に取り組んで参りました.現在までのところ,比較的低いレイノルズ数のチャネル乱流の数値シミュレーションにおいては,進行波状の壁面変形を施すことによって乱流を再層流化し,約70%の抵抗低減・約65%の正味エネルギー削減が出来るところまで来ています.しかし今後さらに実用化を考えた際には,何も動かさずに,即ち受動制御で乱流を再層流化できることが理想です.残された時間でどこまでできるか分かりませんが,理想の実現に向けて,「半学半教」の精神で仲間と一緒にフロンティアを突っ走り続けていきたいと思っております.

 学部生時代は体育会(東大では「運動会」と言います)で,「大学院って何?」と本気で無知だった私がこのような賞を頂けることになったのは,本当に沢山の素晴らしい出会いに恵まれたからだと思っております.末筆となりましたが,これまでご指導頂いた先生方に厚く御礼申し上げますとともに,良きライバルとして切磋琢磨しながら一緒に研究生活を送ってきた数多くの仲間,そして強力に支え続けてくれてきた友人・家族に深く感謝いたします.

更新日:2013.12.26