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「第14回流れのふしぎ展」実施報告

神奈川工科大学 中根一朗

 8月16,17日の2日間,東京・台場の日本科学未来館において,「第14回流れのふしぎ展」を開催した.本イベントは,空気や水の流れを利用した現象を体験してもらう体験型展示・工作教室,流れに関する研究を行っている研究者の講演を聴くシンポジウム,ならびに,風力を利用して風上に走るウインドカーのコンテストから成っている.そしてこれらを通して,理科や科学技術に興味を持ってもらうことが,本イベントの目的である.

図1 第14回流れのふしぎ展の会場の様子

 イベント期間はわずか2日間であったが,延べで4,300人が訪れ,体験型展示には何人もの行列ができるほどの大盛況であった.ウインドカーコンテストも,タイムを競うレーシング部門には63組,障害を乗り越えるアイデアを競う障害物部門には41組と,これまでにないような多数の参加者を集め,大いに盛り上がった.当日の状況を以下に記す.

 

<体験型展示・工作教室>

 体験型展示と工作教室では,「あっ!」と驚いたり,「ふむ…,ふむ…,なるほど!」と感心したりする空気や水の流れを利用した現象を実際に体験し,楽しんでもらうことを主眼としている.なお,体験型展示や工作教室においては,その場で“ふしぎな現象”の説明(なぞ解き)をスタッフがしており,ほとんどの参加者が親子同伴であったためか,子供そっちのけで熱心に質問を繰り返すお父さん,お母さんの姿も見受けられた.

 今回13種類あった体験型展示で人気があったのは,ボールの封じ込め(図2:漏斗状のディフュザーに発泡スチロール球をはめると,風を吹かせた際に生じる圧力差により,球がディフュザーから離れなくなる),ボールの散歩(図3:ドライヤーで上から風を当てることにより,発泡スチロール球をあやつり,凸凹や湾曲した道などがあるコースを進める),マグナスカップ(図4:バックスピンを伴って発泡スチロール製カップを打ち出すことで,マグナス力によりカップが浮き上がり,ふわりと飛ぶ),コーナーキック(図5:回転を与えながら蹴り出す装置を使うことで,サッカーボールに見立てた発泡スチロール球の軌道を曲げてゴールをねらう)と言ったものであった.

  また工作教室(図6)では,体験型展示において紹介したマグナスカップをはじめとして,浮沈子(水の入った容器内を浮き沈みするおもちゃ),雪だるま飛ばし(串に緩めに刺さった発泡スチロールの小球をストローからの息だけで抜き飛ばす),プラコップ転がし(2つのプラコップの底どうしをくっ付けた“コロ”に向けてストローで風を送り,手前に転がす)などの意外な動きをするおもちゃ作りを楽しんでもらい,毎回ほぼ定員一杯の盛況ぶりであった.

図2 なぜ落ちないのだろう?
“ボールの封じ込め”

図3 うまく渡りきれるかな?
“ボールの散歩”

 

図4 上手に飛ばせたね!
“マグナスカップ”

図5 バナナシュートでゴールを狙え!
“コーナーキック”

 

図6 “マグナスカップ”を製作中の工作教室

 

 

図7 血管と血液の流れを説明する
大島まり先生

<シンポジウム>

 シンポジウムでは,「血液の流れをみる!」(大島まり先生,東京大学),「ゴルフボールのディンプルのふしぎ」(青木克巳先生,東海大学),「流れのふしぎ」(石綿良三先生,神奈川工科大学)と題して,3つのテーマでの講演がなされ,参加者は興味深そうに聴講していた.また講演終了後の質問においては,ここでも,お父さん,お母さんからの熱心な質問が相次いだ.

  なお,今回の「流れのふしぎ展」においては,体験型展示・工作教室の会場とシンポジウムの会場が建物の両端に分かれていたため,効率的に参加者をシンポジウム会場へ誘導することができなかった.来年以降,改善すべき点である.

図8 結果のグラフを説明する
青木克巳先生

図9 参加者に流れのふしぎを体験して
もらっている石綿良三先生

 

<ウインドカーコンテスト>

  このコンテストは,風のエネルギーだけで風上に走る模型自動車(ウインドカー)の速さや障害物を乗り越えるアイデアを競うものであり,以下の4種類のクラスに分けて実施した.

  レーシング部門:小学生の部(18組がエントリー),中高生の部(45組がエントリー)
 障害物部門:ジュニアの部(9組がエントリー),高校生・一般の部(32組がエントリー)
なお,いずれの場合も,コース長さ:3m,走路内風速:3m/sであり,ウインドカーは完全に静止した状態からスタートするのが規則である.

  まずレーシング部門においては,デュアルレーシングによるトーナメントであるため,レース終盤での大逆転や,持ちタイム上位者が敗れる波乱などもあり,参加者のみならず会場全体が非常に盛り上がった.その結果,小学生の部の優勝者は米川尚杜君(図 10),中高生の部の優勝者は白石信希君(図 11)となった.また,準優勝,第3位ならびに特別賞の表彰もなされた.

図10 小学生の部優勝の米川尚杜君の作品

図11 作品を手に持つ中高生の部優勝の白石信希君

 

 次に障害物部門においては,3種類の障害物(三角波型障害物,円盤型障害物,半球凸型障害物)を乗り越える際のアイデアの秀逸さを競った.その結果,ジュニアの部では,自作キャタピラーで安定して走行した飯田和希君の作品(図12)が,高校生・一般の部では,幅広のボディにより障害物の影響の少ない場所を軽快に走り抜けた柴田康一さんの作品(図13)が,それぞれアイデア大賞に選ばれた.また,アイデア賞,ベストデザイン賞,ユーモア賞ならびに特別賞の表彰もなされた.

図12 ジュニアの部アイデア
大賞の飯田和希君の作品

図13 幅広ボディで障害物に影響されずに走る
高校生・一般の部アイデア大賞の柴田康一さんの作品

 

<最後に>

  今回も多くの人を集め(延べ4,300人),その目的を達成した本イベントであるが,特に,小学校就学前のお子さんから付き添いのお父さん,お母さんまで,みんなが一様に楽しんでいる姿が印象的であった.このイベントにより,流れのふしぎさを楽しんでもらい,そこから,理科や科学技術に対する興味へとつながれば幸いである.

 なお,開催に際しては,流体工学部門特定事業資金,日本機械学会機械工学振興事業資金,神奈川工科大学からそれぞれ助成金を頂くとともに,多くの機関・団体から後援・協賛を頂いた.また,開催までの準備と会期中の運営に当たっては,委員,学生,一般ボランティア計65名の献身的な協力に支えられた.これら,多大なる助成とご協力に深く感謝の意を表します.

更新日:2008.9.30