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ベルヌーイの定理

1.定義

ベルヌーイの定理とは流体の流れに対するエネルギー保存則です。「ある流れにおいてエネルギーの損失や供給が無視できるとき、一つの流線上の2点のエネルギーは等しい(保存される)」というものです(図1)。


図1

2.ベルヌーイの定理が成立するための条件

次の二つの条件を必要としています。
@同一の流線上の上流側と下流側の2点に対して成立する(図1では点Aと点B)。
Aエネルギーの損失や供給がないこと。損失や供給があっても無視できるくらい小さい場合でもよい。

3.よくある間違い

流れが速いところでは圧力が低い(いつも成り立つというわけではない)」ということをベルヌーイの定理と誤解している人が多くいます。科学入門書、ネット書き込み、テレビ番組などでこの間違いが拡散しています。現象によっては間違った説明のほうが多いこともありますので、注意してください。

4.間違いの事例

(1)「パイプやノズルなどから大気中に空気を吹き出すとき、噴出した流れの所は流速が速いのでベルヌーイの定理から圧力が低くなる(間違い)。」例としては、ストローで息を吹く、口から息を吹く、ドライヤーで風を吹き出すときなど。図2において、点A(流れの中)と点B(周囲の静止した所、大気圧)で比較すると、点Aは点Bより速く流れているので大気圧よりも低い圧力になる(間違い)と考えています。これは、同一の流線上ではないので、前述の条件@を満たさず、ベルヌーイの定理は成り立ちません。正しくは、点Aの圧力も大気圧になります(理論的にも実験でも確認できます)。もともと点Aの流れは吹き出すためにエネルギーを供給している分だけ点Bよりもエネルギーが大きいのです。
もし、点Aが大気圧より低いとしたら、周囲の空気(大気圧)が吸い寄せられ、下流に進むほど空気が集まって流速がどんどん速くなることになり、矛盾があります。


図2

(2)前項と同じ間違い「パイプやノズルなどから空気中に空気を吹き出すとき、噴出した流れの所は流速が速いのでベルヌーイの定理から圧力が低くなる(間違い)。」図2において、点Aと点C(流れの下流側の点)で比較すると、点Cでは流れが遅くて圧力はほぼ大気圧です。一方、点Aはそれよりも速く、圧力は点Cよりも低く、つまり大気圧より低くなる(間違い)という説明の仕方もあります。点Aと点Cは同一の流線上ですが、途中で粘性摩擦により下流に進むほどエネルギーは減少していき、前述の条件Aを満たさず、ベルヌーイの定理が成り立ちません。

(3)「ドライヤーなどからの流れは周囲よりも流速が速く、ベルヌーイの定理から圧力が低くなる。そのため、ピンポン球を浮かべると外に飛び出さない(間違い)。」図3において、点A(流れの中)や点C(球の近く)は点B(周囲の静止した所)に比べて流速が速く、ベルヌーイの定理から圧力が低くなる(間違い)という説明です。点Bは同一の流線上にないのでベルヌーイの定理が成り立ちません。球の近くの流れが曲がることによって、球と流れはお互いに引き寄せあう方向に力がはたらくのです(コアンダ効果)。間違いの説明に矛盾があることは、「丸と四角1(2009年12月公開)」の実験からも確かめられます。


図3

(4)「ストローの途中に穴を開けておき、息を吹くと、ストロー内の流速は速いのでベルヌーイの定理から圧力が低くなり、穴から周囲の空気を吸い込む(間違い)。」図4において、ストロー内の点Aでは外部の点B(大気圧)に比べて流速が速いので大気圧より低くなり、周囲の空気が穴から吸い込まれる(間違い)という説明です。点Aと点Bは同一の流線上ではないので、ベルヌーイの定理は成り立ちません。正しくは、点Aでは大気圧より圧力は高く、穴から空気が吹き出します。このことは、リコーダー(縦笛)を吹くと途中の横穴から空気が吹き出ることからわかるはずで、多くの人が経験していると思います。点C(出口)では大気圧であり、そこと点Aとの間では粘性摩擦によりエネルギー損失があり、点Aでは点Cよりも大きなエネルギーを持っています。この損失エネルギー分だけ上流側の点Aの圧力は高くなっていて(大気圧より高い)、大気圧である外部に空気が吹き出るのです。


図4

5.補足説明

流体の持つエネルギーのバランスを考えるとき、運動エネルギー、位置エネルギー、圧力による仕事(圧力のエネルギーとみなしてもよい)、内部エネルギー(分子運動、分子振動によるエネルギー)の総和で考えます。液体など体積変化の小さな流体の場合は、運動エネルギー、位置エネルギー、圧力による仕事の三つの総和が保存されるというベルヌーイの式を用います。さらに、位置エネルギーが一定(同じ高さ)であれば、運動エネルギーと圧力による仕事の和が一定となり、「流速が速い所では圧力が小さい」といえます。このことがいえるのは以上の多くの条件が満たされる場合に限定されるということを知っておいてください。

【参考】 石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P218−219、P206−209.
日本機械学会編「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P98−109.

更新日:2017.10.1