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第86期(2008年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

高橋 易資 (本田技術研究所)
矢野 猛 (大阪大学)
高比良裕之 (大阪府立大学)
河原 源太 (大阪大学)

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一般表彰(フロンティア表彰)


高橋 易資 (本田技術研究所)

受賞理由:

 二輪車開発では,格子生成の複雑さからCFDの熱流体・空力設計への応用は困難であった.高橋氏は直線直交格子法を改良し,複雑形状流れの格子生成工数と計算時間を大幅に低減した実用手法を先進開発し,二輪車設計における熱と流れの挙動に対する知見を深め,CFDの活用範囲拡大に大きく貢献した.

受賞のコメント:

  

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一般表彰(フロンティア表彰)


矢野 猛 (大阪大学)

受賞理由:

 蒸発あるいは凝縮が生じている気液界面から気体側へ出てゆく分子の速度分布関数を分子動力学法を用いて決定され,これを境界条件としてボルツマン方程式を解く方法論を確立されました.これにより,非平衡相変化を伴う流れにおける分子の微視的挙動と巨視的輸送の関係に対する知見を深め,当該分野の進展に貢献されました.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦下さった方々,関係各位ならびにこれまで研究面で多大なご指導とご協力を下さった皆様方に厚く御礼申し上げます.

  気液界面における蒸発あるいは凝縮をともなう気体の流れに対する境界条件の問題は,わたしが京都大学航空工学科4回生のときに,曾根良夫先生(現京大名誉教授)から与えられた卒業研究の課題でありました.曾根先生のもとを離れて以来,しばらく遠ざかっていた蒸発・凝縮をともなう気体の流れの研究に再び舞い戻り,こうして名誉ある賞を受賞できることは感慨無量であります.

 機械工学が扱う問題の多くにおいて,Knudsen数は1に比べて十分に小さく,したがって,境界近傍を除く気体領域のほとんどすべての部分が局所平衡の仮定に基づく連続体理論で記述されます.しかしながら,系全体が平衡である場合を除いて,境界近傍の気体は必ず非平衡状態にあります.それでも境界が固体であれば,境界近傍の非平衡の効果は,境界から離れた連続体領域の気体の流れに対して,Knudsen数に比例する小さな補正を与えるだけです(Ghost Effectを除いて).ところが,境界が気液界面であって,そこで蒸発あるいは凝縮が起こっていれば,たとえKnudsen数が十分に小さくとも,境界から離れた連続体領域に蒸発流あるいは凝縮流という形の有限の影響が現れます.そして,蒸発・凝縮が非平衡現象であるがゆえに,これを記述する法則を連続体理論から導くことはできないのです.今回の受賞対象となった研究では,蒸発・凝縮を記述する法則を,分子動力学法を利用して導くことを目指しました.現在,このような法則が導かれる根本的な原理に関心をもっております.今後も変わらないご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます.

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一般表彰(フロンティア表彰)


高比良裕之 (大阪府立大学)

受賞理由:

 気泡力学の解明に関して先駆的研究を遂行されました.特に,個々の気泡の三次元並進運動・変形を考慮した気泡群の運動方程式の導出ならびに高精度数値計算手法の開発を通して,気泡群の非線形力学に関する知見を深めるとともに,マイクロバブルのレーザ捕捉手法を考案するなど,流体工学の新たな研究分野を開拓されました.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)という大変名誉な表彰を賜り,大変光栄に存じます.推薦者,関係各位,これまでにご指導賜った先生方ならびに一緒に研究した学生の皆様に厚く御礼申し上げます.

  私がこれまで携わってきた気泡力学の研究は,界面での輸送現象を含む自由境界値問題として,現在でも解析が困難な問題の一つだと思われます.このうち私が最初に取り組んだ課題は気泡間の相互作用の影響を解明することでした.2個の球形気泡の力学から始めて,2個の非球形気泡の力学,そしてN個の非球形気泡の力学へと発展させて,気泡群の力学理論を構築することが目標でした.当時を振り返ると,球面調和関数展開による気泡群の運動方程式の導出のために,連日,式と格闘していました.この理論は一応の完成を見て,カオス現象と関連した気泡群の非線形振動解析等へと応用されました.一方で,摂動法に基づく理論解析には,液体ジェットの貫通を伴う気泡の大変形を扱えないといった限界があります.そのため,大変形を精度良く解析するために,その後,境界要素法,Level Set法,Ghost Fluid法などを気泡力学に適用することに注力しました.どの数値計算手法においても,気液界面での不連続量の取扱いなど,一筋縄ではいかない問題が多く,現在も継続して研究を進めています.

  理論および数値解析と平行して,ちょうど日本経済の「バブルの崩壊」の頃から,超音波医療への応用を目指して,マイクロバブルのレーザトラップの実験に着手しました.当初,実験は失敗の連続でしたが,ミクロンオーダの気泡を観測するためには,とにかく液体中で気泡を非接触で捕捉しないと始まらないという一念から,実験を行っていました.幸い,作動距離の長い対物レンズを用いた,液外からのマイクロバブルの捕捉に成功し,本手法は,界面活性剤に覆われたマイクロバブルの安定性の解析等に応用されました.

 振り返ってみると,私がこれまで気泡力学の研究を行ってきた原動力は,変形を伴いながら超高速で収縮する「バブルの崩壊」の極限で何が起こっているのかを探求することにあったと思います.今もその思いは強く,「バブルの崩壊」の先に素晴らしい未来を期待して,今後も現象の解明に努め,微力ながら流体工学の発展に貢献できればと考えています.

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一般表彰(フロンティア表彰)


河原 源太(大阪大学)

受賞理由:

 乱流中に現われる渦構造の動力学に関する研究に取り組み,縦渦やストリークといった代表的な秩序構造のふるまいを理論的に解明した.特に,ナビエ・ストークス方程式の不安定周期解により秩序構造を厳密に定義し,その動力学を解析するという独自の手法を提案し,乱流研究における新たな領域を開拓した.

受賞のコメント:

 この度は,栄えある流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.ご推薦いただいた先生ならびにこれまでご指導下さった先生方に厚く御礼申し上げます.

 大学に職を得てからの約20年間,一貫して乱流中の秩序構造に関する研究に取り組んできました.秩序構造に関心を持ったきっかけは,大学を出て初めての就職先であった愛媛大学流体工学研究室の当時教授であられた鮎川恭三先生から伺ったダクト乱流中の秩序構造の興味深いお話でした.不規則性がその本質であるはずの乱流中に際立った秩序が存在する,というお話は逆説的で非常に魅力的であり,それ以来秩序構造に関する研究に没頭してきました.今回の受賞対象となった一連の研究では,「乱流中の秩序構造はどのように生成されるのか?」,「秩序構造は乱流中でなぜ再生維持されるのか?」,「秩序構造が果たす乱流における役割は?」といった素朴な疑問に対する答えを探ってきました.ちょうどこれらの研究を行った時期は,奇しくも多数の研究者が乱流研究に携わり,壁乱流の緩和層における秩序構造である縦渦や低速ストリークの生成メカニズムや再生サイクルが解明された1990年代,2000年代初頭と重なります.そのお陰で,木田重雄教授(京都大学),柳瀬眞一郎教授(岡山大学),Javier Jimenez教授(Madrid工科大学)をはじめ,第一線で活躍するたくさんの研究者の方々と共同研究を行える幸運に恵まれました.また,共同研究を通じて,剪断流における縦渦まわりの渦線の巻き込みと低速ストリークの生成を記述する漸近解,ストリークの三次元不安定とそれによる流れ方向渦度の生成を表す固有解,さらには縦渦とストリークの再生維持サイクルを再現する周期解を求めるなど,様々な経験をすることができました.

 以上の研究によって壁近傍での秩序構造の生成や再生維持に関する疑問については自分なりの答えが得られましたが,秩序構造の役割については依然として不明な点が多く残されています.一方,対数層における秩序構造の動力学の解明も,今後の重要な研究課題のひとつです.今回の受賞を契機に,微力ながら,これらの課題も含め,乱流に関する新たな問題に挑戦して行きたいと考えております.

更新日:2008.10.15