部門賞

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第91期 (2013年度)流体工学部門 部門賞

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部門賞


酒井 康彦(名古屋大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に顕著な功績を収めた.特に,噴流のコヒーレント構造や乱流中の物質拡散等に関する実験的研究において多数の卓越した業績を挙げた.また,部門長として流体工学部門の発展に多大なる貢献をした.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門賞という大変名誉な賞を賜り,誠に光栄に存じます.これまで私を教育・研究の道に導いて頂いた恩師の先生方,共に研究に取り組んで頂いた同僚や後輩,並びに研究推進に多大な協力をして頂いた多くの教え子の皆様にも心より御礼申し上げます.また,推薦者をはじめ,学会関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.

 私が流体工学の道に入りましたのは,昭和52年(1977年) 4月に名古屋大学工学部機械学科,「流体機械講座」に配属された時でした.当時の講座は,古屋善正教授(故人,名大名誉教授)を筆頭にして,中村育雄助教授(現名大名誉教授),宮田勝文助手(現山梨大学名誉教授),山下新太郎助手(現岐阜大学名誉教授),櫛田武広教務員,神田博邦技官といった充実した研究スタッフに加え,正村潤子さんという秘書官までいて,極めてよい研究環境が整っておりました.ここで私は卒論として研究室内では一風変わった「希薄気体と固体面の干渉に関する研究」というテーマに取り組みました.その卒論の遂行は,研究というものを全く経験したことのなかった私にとっては,多少の困難さを感じましたが,当時三重大学教授の藤本哲夫先生(現名大名誉教授)のご指導により何とか乗り切ることができました.

 卒論が終了して,昭和53年(1978年)4月に大学院博士前期課程に進学し,同じ研究室に配属されました.研究課題としては,「乱流拡散」という新しい研究テーマを選びました.新しいテーマと言えば,聞こえはよいですが,実際は実験装置もそれを置く場所もなく,4月から講師に昇任しておられた宮田勝文先生のご指導のもとで,まず実験室の一角の片付けから始めました.通常新しい研究の立ち上げは相当の体力と知力と根性が必要とされます.宮田先生が翌年1月から独国に留学された後は,まさに実験室は私にとって根性を養う精神道場の感がありましたが,中村育雄先生のご指導のおかげで幾多の困難を乗り切り,なんとか修士論文をまとめ上げることができました.今思えば,この博士前期課程で培った”根性”が今日までなんとか研究者として活動することができた原動力となりました.

 大学院博士前期課程修了後は,博士後期課程に進学し引き続き「乱流拡散」の研究に没頭しましたが,昭和58年(1983年)4月から名古屋大学の職員(助手)となり,それ以来30年にわたり,名古屋大学で教育・研究に携わることになりました.この間,2度にわたる英国留学の機会に恵まれ,英国で得た経験と,そこで知り合った友人との交流はその後の私の研究の幅を大きくする糧となりました.最近では,学外から依頼される業務や学会活動に参画する機会が増えてきてはおりますが,大学の研究室の良いところは,毎年新鮮な感覚をもった学生が配属されてくるので,これらの学生諸君と共に考え,実験計画を練り,また難解な乱流関係の書物や文献を輪講することが出来ることかと思います.今回の受賞理由にあります「噴流のコヒーレント構造」に関する研究も,私が研究室の責任者になった後で取り組んだテーマでありました.私にとりましては,これらの学生諸君と過ごした思い出がこの上ない宝物として心に残っているのであります.大学教員としての活動は,まだしばらく続きますが,ここで自分への叱咤激励の意も含めて,現在愛娘の通う高等学校の創立者による以下の句を揚げたく存じます.
「ここをしも悟りの峰と想ひしは,迷ひに降る始めなりけり」

 本受賞を契機にさらなる高みを目指し,流体工学の発展に少しでも貢献していきたいと思っています.皆様,今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます.

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谷下 一夫(慶應義塾大学名誉・早稲田大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に顕著な功績を収めた.特に,動脈内流れの研究をはじめとする多くの先駆的研究によって,我が国の生体流体工学分野に確固たる基盤を与え,当該分野の著しい発展を先導した.

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柳瀬 眞一郎(岡山大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に顕著な功績を収めた.特に,曲がり管内流れの分岐,安定性,遷移に関する理論的・数値的研究において多数の卓越した業績をあげて,乱流の理解とその工学への応用の発展に多大なる貢献をした.

 受賞のコメント:

 今回は,流体工学部門の部門賞をいただくことになりまして,これ以上の喜びはございません.小生は,出身が理学部でして,岡山大学工学部機械工学科(正式には共通講座)へ就職後も,機械工学になかなかなじめず,特に,どのようなテーマで研究を行ったらよいのかという問題が,なかなか焦点が定まりませんでした.幸運にも,小生を岡大に呼んでいただいた山本恭二教授から,曲がり管内流の数値計算をやってみないかとご指示して頂き,それに従って研究を行ったところ当時世界的にも新しい結果を得ることができました.それから約30年間,様々なテーマの流体工学の研究を行ってきましたが,曲がり管内流の研究は途絶えることなく続けてきました.この受賞がそれも認めていただけたのでしたらこの光栄の大半は,山本先生のご支援のおかげであると思っております.さて,流体工学あるいは流体力学は本当に不思議な学問で,いつまでたっても新しく興味深いテーマが次々と沸いてくる分野で,比較的長く研究に従事させていただいている小生も本当に感心しています.また,それらのテーマが,常にその時代で最も社会的に必要とされる分野の重要な問題の鍵(キー)となっていることも特筆すべきではないかと思います.例えば,現代,最も注目されている放射性物質などの拡散は全く流体力学の問題であり,動脈瘤などの血管内の障害も医学だけでなく流体力学の重要な研究対象となっています.このように,いつまでも新しい分野を取り込み発展を続ける流体力学を,小生は天を舞う龍のようなイメージで捉えています.私事で恐縮ですが,曲がり管内流においても,小生の研究グループでは超低レイノルズ数流れにおいてラグランジュアンカオスによって十分な混合が達成されることを実験的・理論的に確かめたところです.このようにすばらしい未来を持つ流体工学の分野が,若い優秀な研究者の参加によってさらに発展することを望んでやみません.

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服部 修次(福井大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績を収めた.特に,流体機械におけるキャビテーション現象とこれによる機器損傷の予測ならびに評価に関する多数の卓越した研究業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,栄えある流体工学部門賞をいただき,誠に光栄に存じます.

 ご推薦下さいました皆様,並びに恩師,研究室OB, その他各方面関係者各位に,心より感謝申し上げます.

 受賞対象の研究は,主に,キャビテーションによる機器の損傷予測及び評価に関するものですが,キャビテーション損傷は流体工学と材料力学にまたがる境界領域の学問分野で未解決な諸問題が山積しておりました.液体中で発生する気泡の崩壊時の衝撃力による表面損傷であるキャビテーション損傷は,液体を作動流体とする流体機械を高性能化する場合において,最も重大な問題の一つです.キャビテーションに長時間さらされた部材は,凹凸の激しい海綿状になり,機器の性能低下,部材の減肉,応力集中による部材の破断を導きます.キャビテーション壊食の恐れのある機器や部材は,舶用プロペラ,ポンプ,水車,配管,バルブ,ディーゼルエンジンのシリンダライナ,燃料噴射パイプなど多岐にわたります.これら高速流体を扱うあらゆる流体機械,部材で発生しており,キャビテーションによる損傷は大変重要な問題となっております.私の研究の出発点は材料力学分野の疲労や腐食疲労の研究ですが,キャビテーション損傷が疲労現象に類似していることに関心を持ち,この研究を開始しました.研究をはじめてこれまで約30年間,各種工業材料のキャビテーション壊食を実施,壊食特性を明らかにし,研究室で試験をおこなった約1000件の損傷データをデータベースに取りまとめ,即時検索を可能にしました.同時に,それぞれの損傷データの解析も行いました.また壊食量予測法の確立についても,キャビテーション気泡崩壊圧の計測システムを作成して検討して参りました.最近では,液体金属中や液体窒素中のキャビテーション壊食についても研究も進めておりますので,キャビテーションによる機器の損傷予測並びに評価法については,ある程度の段階まで明らかにできたのではないかと考えております.

 しかし,近年における流体機器は,過酷な環境,高流速,機器の小型化など非常にキャビテーションが発生しやすい状況下にあり,この研究の必要性がますます高まってきていると痛感しております.

 今後は,キャビテーション損傷を積極的に防止するための手法について,さらなる検討を進めていきたいと考えております.特に,長期間にわたるキャビテーション損傷の問題,高分子被覆材料による損傷防止法など,機器保全との関わりについての研究をさらに進めて参りたいと考えております.今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます.

更新日:2013.12.26