部門賞

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第94期 (2016年度)流体工学部門 部門賞

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部門賞


梶島 岳夫(大阪大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,乱流や多相流をはじめとする複雑流れの数値シミュレーションに関する研究において顕著な業績を挙げた.また,部門長として流体工学部門の発展に多大なる貢献をした.

受賞のコメント:

 このたびは流体工学部門賞をいただき、たいへん光栄に存じます。関係各位にあつくお礼申し上げます。

 大阪大学工学部機械工学科の学生であった昭和55年に卒業研究のために村田暹先生の研究室を選んで流体工学に関わるようになり、後任の三宅裕先生の指導で昭和61年に学位を取得し、引き続き助手として研究を続ける機会を得ました。昭和61年2月に東大生研NSTシンポジウム、翌昭和62年12月に数値流体力学シンポジウムの第1回目が開催されていますから、わたしの経歴は国内における数値計算(特に乱流の数値シミュレーション)の発展と重なっています。きっかけは、この方法を使えば矩形ダクトの第2種二次流れがわかるかも知れないと、大学院進学時にDeardroffの論文のコピーを三宅先生から渡されたことと記憶しています。方法を作り替えなければならなかったため、目的を達したのは学位取得の数年後でした。1980年代は研究のスタートとしては幸運な時期であったかも知れませんが、先行するStanfordのCTRで既に多くの研究が行われていたこともあり、個人的には目立った成果はありません。ただ、精度次数を高めるのではなく保存則を考慮した離散化により、差分法でも乱流構造が再現可能であることを示し得たことには多少の自己満足はあります。特に長野靖尚先生から、二次流れのことがよくわかった、差分法でDNSができることがわかってうれしい、などと発表後にたびたび言葉をかけていただいたことは、駆け出しの不安な頃だけでなく今にいたるまで心の支えになっています。その後に工業技術院で同僚となった齋藤隆之氏との出会いは、多相系の乱流にテーマを広げる転機になったばかりでなく、四半世紀にわたりつねに意見交換のできる実験家の友人を得たという意味で貴重な財産となりました。大阪大学に戻ってから20年以上が過ぎましたが、最近は優秀な共同研究者や学生に引っ張られる日々です。研究室では、実際の装置を扱ったり見栄えのする対象を選んだりするよりも、本寸法の方法であるかどうかを強く意識しながら現象を再現して解明することを目標にしてきました。幸い多くの研究室出身者がそれぞれの分野で信頼され活躍していると聞き、それが最大の成果であったかと思います。

 部門賞の趣旨は「長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事」とのことですから、思い出すままに書きました。この間、導いてくださった先輩方、関わってくれた研究室の仲間、支えてくれた家族に感謝します。

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部門賞


川口 靖夫(東京理科大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,乱流の抵抗低減効果,非ニュートン流体や混相流現象の解明とそれらの工学的応用において顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 日本機械学会は私にとって特別な学会であり,流体工学部門から栄誉ある部門賞を受賞したことを光栄に存じます.大学で厳しくご指導くださり,また学会,職場で寛容に見守ってくださった多くの先生方,上司の皆様,先輩方,私の研究を認めてご推薦いただいた方々にも厚く御礼申し上げます.一緒に研究に携わった多くの同僚,学生さん達,家族ともこの喜びを分かち合いたいと思います.

 1985年より奉職した機械技術研究所(現産業技術総合研究所)で省エネルギーにつながる研究提案を求められ,大規模な熱輸送システムにトムズ効果の利用を考えるようになりました.トムズ効果は微量の化学物質を液体流れに添加することで80%ものポンプ動力削減が可能であり,利得/費用の比はすばらしく良いため,すでに数十年に亘って研究がなされてきました.抵抗低減の直接的要因は乱流,さらに言うなら壁乱流における組織的構造の変化によって説明できる,と信じて始めた研究が2005年に東京理科大学に移ってからも継続し,現在に繋がっています.

  皆様ご存知のように,乱流では乱れエネルギーというポケットにエネルギーを蓄えることができ,乱れは時間・空間スケールで特徴づけられます.粘弾性流体にも同様にエネルギーを蓄えるポケットがあり,緩和時間や空間スケールが存在します.粘弾性流体乱流には2つのポケットがあり,ある場面では速度変動を強化し,摩擦やスカラー伝達を強め,また別の場面では乱れを抑制し,摩擦抵抗を減らしています.その過程で壁近傍の組織的構造は多彩な変化を遂げています.ニュートン流体乱流が「平均流れ」と「乱れ」という2者の間で夫婦関係にあると例えるなら,粘弾性流体乱流は,子供を加えた3人家族になっていると見なせます.粘弾性流体の乱流は格段に複雑で頭痛の種であるとともに,豊饒で楽しい研究対象となっています.

 この重要な賞を励みとして,これからも若い人達を巻き込んで新しい分野に踏み出していきたいと思っています.日本機械学会にもいくらかでも御恩返しができればと希望しています.どうぞよろしくお願い申し上げます.

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山口 博司(同志社大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,機能性流体や磁性流体のエネルギー変換をはじめとする工学的応用に関する研究において顕著な業績を挙げた.

 受賞のコメント:

 磁性流体の持つスマートさに魅せられて,研究を続けて参りました。磁性流体はナノオーダーの強磁性微粒子が安定分散した流体であり、磁場下で興味深い流動性を示し、流体科学の新たな研究分野としての性格を有すると共に、工学的にさらなる技術革新を生み出す可能性があります。また磁性流体は、それ自身科学技術において分野横断的であり、教育の教材としても大変適した材料でもあります。これまで磁性流体の基礎的な流動挙動の解明とエネルギーの変換技術の創成に取り組んで来ました。この流体の創成期は1960年代であり、私が本格的に磁性流体研究に取り組み始めたのは1980年代からのことです。この頃は、磁性流体の連続体としての理論が確立され始めた時であり、また流体自身も入手可能な時期でありました。従いまして、片手に磁性流体を持って基礎実験の構想を練りながら、磁場下での流体挙動を知る上で重要な連続体理論を勉強できたことはまったくもって幸運でありました。現在実用化されている磁性流体の技術も、この頃に議論されたものが多くあります。その後、現在に至るまで、粒子の内部角運動量の考え方を基礎とする連続体の理論については多くの進展があり、近年では流体の内部構造、特にクラスター形成を基に議論が展開されています。コンピューターの飛躍的な発達と数値計算の進展も重なり、今では、流れ場と磁場の相互作用がより明確に議論できるようになりました。また、これらの連続体理論に立脚した理論の進歩は、技術的な応用への広がりを可能にしていることも確かです。当初創成期においては、工学的な技術分野への応用が主でしたが、近年では、工学分野のみならず医療分野への進展が目覚ましくなっています。今後も磁性流体の流動に対する連続体理論、さらにメソスコピックな理論展開も進展することでしょう。また、応用面では、エネルギー・環境、宇宙・深海などの分野に対しても革新的な応用技術が出てくることが期待されるとともに、医療分野へのさらなる展開が期待されます。流体工学教育にも、磁性流体が貢献できることは間違いありません。

 今回の受賞は、身に余る栄誉であります。ここに、研究また、教育面でもお世話になりました方々のご恩に感謝の意を表します。

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平原 裕行(埼玉大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,マイクロ風車の開発や肺気流の計測など流体応用工学や流体計測に関する研究において顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門賞という栄えある賞を賜りまして甚だ光栄に存じます.これまでに,この道において私を導いて下さった先生方,一緒に様々な討論をしていただいた同僚の方々,大学にあっては,遅くまで一緒になって研究をやっていただいた諸兄,学生の皆さんに深く感謝の意を表するところでございます.

 思えば,大学において卒業研究を選択する際に,「衝撃波のマッハ反射」という,当時の私には,想像もつかない言葉に惹かれてこのテーマを選択したのが流体力学の道に入ったきっかけとなりました.このテーマは,希望者がいなくて申し込み欄が空欄になっていたテーマでもありました.折よくそこに希望を入れられたことが私の流体力学の研究の出発点となりました.人生の流れはまさにカスケードで,ちょっとした分岐点から到達点が変わるものであり,後にして思えば,流されるままに過ごしてきた研究生活であったと感じます.選んだテーマをご指導していただいた九州大学の松尾一泰先生には,学術研究のあり方を篤と学びました.会社に一旦入り,社会の空気を一瞬だけ吸った後に,埼玉大学に奉職することとなり,再び学術研究の道につくこととなりました.埼玉大学では川橋正昭教授のご指導のもと,音,有限振幅波,振動流をキーワードにして様々な研究に取り組みました.圧縮性流れで博論を書いた私には,うってつけの職場であり,多くのことを学ばせていただきました.

  機械学会とのお付き合いの中でいい思い出として浮かんでくるのは,流れの夢コンテストを企画し開始したときのことです.第1回目は,アイデアコンテストとして開催し,学生諸君が様々な視点から「流れを使った夢」を語ってくれました.このコンテストは第2回コンテストにおいて作品として制作したものを審査するように伊藤基之先生がコンテストの内容を充実されて,現在に至っております.すでに15回を重ねており,若い方々のユニークな発想を毎回楽しませていただいております.これからも,このような若い方々の斬新な発想の啓蒙が続くことを念じております.

 流れの問題は,なかなかに理解しがたく,それゆえに,実際の現象や実験を通じて,未だに多くの発見や再認識を経験しながらの毎日が続いています.この分野の研究が今後も多くの成果を上げ,社会に貢献できることを祈念しつつ筆をおかせていただきます.重ねてこの度はありがとうございました.

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菱田 公一(慶應義塾大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,PIVやLIFなど熱流体の新しい計測法に関する研究において顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 このたびは流体工学部門賞をいただき,大変光栄に存じます.推薦をしていただきました関係者各位に心より御礼を申し上げる次第です.思い起こせば,学生時代より,流体の計測法の開発に携わって参りました.中古のカメラを分解してプリズムを取り出し,レーザ流速計をくみ上げていたことがつい昨日のように思い出されます.原理原則に従い,ないものは自分で作り上げる.それが新しい現象を見つけ出せるとの信念を持ち続けてきた事を評価していただいていると考えています.今後もこれ賞を励みとして,次世代へ繋ぐべく,微力ながら尽力する所存です. 現在,熱流体計測はレーザ,計算機,高速度カメラなどの著しい発展にともいない,高度なシステムも入手できる時代になりました.よくできている計測器はそれなりの結果が出てくると内部処理の内容を知らなくてもよいような状況に陥る事があります.そのような事が日常化すると,ついつい本質を見失う事が出てくると思います.絶えず原点に立ち返り,真実を追究する姿勢が大事であると考えています.そのような姿勢を続けることで誰もやっていない新たな複合計測が可能になり,新しい現象を見いだすことができるようになると確信しています.ここ10年欧州での熱流体計測のプロジェクトの成功例には目を見張るものがあります.我が国もこれまでの積み上げられてきた熱流体計測の基盤学術をもとに,さらなる展開を推し進め.当該分野のさらなる進展を願う次第です.

更新日:2017.5.25