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P-SCD 339 :噴流現象の基礎と先端的応用に関する研究分科会 第82期活動報告

主 査:社河内 敏彦 (三重大学)
幹 事:辻本公一(三重大学)

はじめに
本分科会の設置期間は2005年8月まで延長されることとなっている.
以下は2004年度分に関する活動報告である.

本年度の活動内容および成果
   詳細は後述する.
   1.研究分科会の開催(計4回)
   2.オーガナイズドセッションの企画,実施(計2会議)
   3.国際会議(ICJWSF:2005年開催)の企画,準備
   4.その他(分科会委員の追加)

本年度の活動内容および成果(詳細)

研究分科会の開催(計4回)

委員からの話題提供に基づき,噴流の基礎ならびに先端的応用に関する調査研究を行った.
以下に各回の議事録(抜粋版)を記載する.(文中,配布資料番号は当分科会の資料の通し番号である.)

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<.第7回研究分科会(話題提供3件)>
日 時:平成16年5月21日(金) 13:00~17:05
場 所:機械学会345会議室
出席者:19名
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「二次元噴流の乱流遷移と渦構造の制御」

           話題提供者: 関下 信正 先生(豊橋技科大)
蒔田 秀治 先生(豊橋技科大)
講演内容
a.研究の背景
b.単一正弦波による音波制御
c.バイモーダル波による音波制御
d.突起列によるリブ構造の制御

乱流遷移に組織渦構造がどのような役割を果たしているのかを考察するため,二次元ノズルから放物型速度分布を持つ空気を放出させることで,下流側に安定したロール状渦を形成し,渦構造の変化を追跡,あるいは制御した場合について評価した結果が示された.1)ノズル出口下流側ではスパン方向に軸を持つロール状の渦構造(横渦)が噴流軸中心に対称な’対称配列モード’と流れ方向にある位相差を持って横渦が並ぶ’逆対称モードの主要な二種類のモードが存在し,制御しなければ逆対称モードの存在が圧倒的優位であること,2)二つのモードに対応し,スピーカによる励起方向(噴流軸方向あるいはそれと直交方向のどちらか)により,一方のモードのみの発生を制御することが可能であること,3)対称モードの基本周波数とそのサブハーモニック周波数を組み合わせたバイモーダル波で励起することにより,流れ方向に規模の異なる渦が形成され,かつ発生した横渦同士の合体の制御が可能であることが見出された.さらに 1)発達した乱流状態前の非線形領域では横渦のスパン方向に変形が生じ,これが流れ方向に軸を持った縦渦と干渉して乱流遷移すること,2)ノズル出口近傍に突起列を配置することでスパン方向の変形の発生位置の固定が可能であること 3)これらの制御手法を組み合わせることで,条件抽出等の統計的手段による渦構造の定量的な変化の追跡が可能となったことが述べられた.また,単一正弦波やバイモーダル制御における励起強度や位相差などの制御パラメータに対する応答についても詳細に検討された結果の報告が行われた.

(配布資料)
No.7-4-1. 二次元噴流中に存在する渦管の合体機構の解明(A4 2p)
No.7-4-2. Vortex Structure in a Plane Jet Excited by Bimodal waves(A4 4p)
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「アクチュエータ群を用いた噴流混合と燃焼のアクティブ制御」

           話題提供者: 鈴木 雄二 先生(東京大学)

       講演内容
a.研究の背景
b.噴流制御
c.燃焼制御

いくつかの最近の噴流制御の紹介のあと,フラップ形のミニチュアアクチュエータを軸対称ノズルの内側の周方向に配置したインテリジェントノズルの構造,アクチュエータの変形特性について簡単な説明があった.ノズル開発の目的の一つは,マイクロガスタービン等の分散エネルギシステムの燃焼器における燃焼特性の改善で,1)これら燃焼器の規模が比較的小さく混合が困難であること,2)部分負荷時においては予混合火炎から拡散火炎への移行が必要でそれに伴うNOxの排出量の低減等,安定した燃焼のため流れの積極的な制御が必要とされていること,3)予混合燃焼を活発に行うためには大きな渦構造を形成,部分負荷時では大規模混合を行うと燃料が薄くなりかえって燃焼しにくくなることことから比較的小さな渦構造を活性化することが望まれること,など研究の背景や目的について明確な説明があった.噴流制御特性については,1)フラップの変形モード(のこぎり波,矩形波),駆動周波数等を変化させた結果,ノズル近傍の流動構造はフラップ運動に関連して起こる大規模渦構造に支配されていること,2)発生した大規模渦はスピーカで励起した不安定モードや小さい渦が合体して生じたたものではなく,ノズル出口からの直接的な渦の巻き上がりの結果として生じたものであること,3)混合は渦の直径と発生周期に依存し,そのことがフラップにより制御されることが明らかにされた.また,燃焼時の濃度場,温度場制御のため,同ノズルを用いて吹き上がり火炎の特性が評価され結果,1)矩形波で制御した場合,火炎上流で予混合火炎の特性を示し火炎は短くNOxの濃度が減ること,2)のこぎり波で制御した場合,出口の大規模渦運動が比較的下流側まで保持され,そのことで火炎への燃料供給が周期的に行われ,保炎されることが明らかにされた.
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「ウォータジェットの各種産業へのアプリケーション」

話題提供者: 高杉 信秀 様((株)スギノマシン )

       講演内容
a.ウォータジェットの分類
b.各種産業への応用例について
c.水中ウォータジェットノズルの可視化

ウォータジェットの分類と技術的な用途(切断,加工,洗浄等)についての簡単な説明あった.応用例として,切断(金属加工,食料品加工),剥離・はつり(コンクリートからセメント部分の除去),洗浄・ばり取り のそれぞれに関する動画を用いた説明,また対向するジェット噴流中に粒子を投入し衝突させることによる微粒化,医療関係では外科手術用のアクアジェットメス,バイオ関係でのDNA検査用機器など,幅広い分野での使用例の紹介がありその問題点が指摘された.水中ウォータジェットノズルでは,下流に向かい広がるテーパ部からなるカラーをノズル出口に取り付けたホーンノズルの説明があり,アルミ板のエロージョン試験(洗浄性能試験)後の試験片が回覧された.このようなエロージョンの要因は,噴流外縁の高せん断層領域で発生するキャビテーションのクラウド化と,そのクラウド状キャビテーションの崩壊による壊食によるものであることが示された.さらに噴流中心軸に棒状の部品を挿入することにより中心軸近傍において高いせん断層を形成すると,噴流全体にキャビテーション領域が広がり,その結果,比較的均一なエロージョン領域が形成がされることも明らかにされた.また,水中ジェット放出時のクラウドキャビテーションの形成とこれに関連して起こる非定常な衝撃波構造の発生や,水中洗浄のバリ取り除去の高速度ビデオなど興味深い可視化結果の紹介があった.

(配布資料)
No.7-5.  本講演用Power point原稿の写し(A4 3p)
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<.第8回研究分科会(話題提供3件)>
日 時:平成16年9月5日(金) 13:10~17:00
場 所:北海道大学工学研究科・工学部 材料化学系棟5階 526大会議室
出席者:20名
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「ノズル内に設置した二次元物体後流による噴流のパッシブ制御法」

           話題提供者:宮越 勝美 先生(北見工業大学)
講演内容
a.制御方法の分類
b.二次元物体後流による制御の特徴
c.二次元物体後流による混合/拡散の制御機構
d.非調和型制御時の噴流構造        
e.異径二円柱による噴流制御       

噴流制御の分類に関する簡単な説明のあと,噴流の混合・拡散の抑制と促進を目的に,噴流出口より上流のノズル内に二次元物体を設置することでパッシブな制御を行った結果が示された.二次元物体として円柱あるいは半円柱を採用し,設置位置や代表寸法を変化させ,ノズル内での後流の渦周波数特性,ノズル出口での速度分布特性について調べた結果,周波数特性は物体の後流幅の大きさに依存することが示された.このときの噴流拡散に関する制御効果を調べた結果,噴流の広がり幅が抑制される場合と促進される場合があること,可視化結果やスペクトルデータから,1)噴流のせん断層の不安定周波数よりも高い周波数の後流渦がある場合,せん断層の渦の発達が抑制されること,2)後流周波数が複数の周波数ピークをもつ調和型制御の場合,ノズル出口直後にできる対称配列の渦ならびにその下流の逆対称配列の大規模渦が強化されることが明らかにされた.また,抑制効果が支配的となるストローハル数帯域の一部において促進効果が見られる特異領域があること,この領域では非調和型に制御された噴流にフラッピングが生じていることを見出し,フラッピングの動的特性の定量的,定性的特性について調べた結果が示された.その際,位相平均における信号解析処理についても独自の提案をし,その有効性について示された.さらにこのフラピング現象による拡散促進効果を期待して行った異なる大きさを持つ2つの円柱を配置した実験では,顕著な促進効果が得られたことが報告された.

(配布資料)
No.8-4-1. 本講演用Power point原稿の写し(A4 9p)
No.8-4-2. 「ノズル内の二次元物体によってパッシブ制御された二次元噴流の組織構造」(機論)
No.8-4-3. Transient Flow Structure of a Jet Under Inharmonic Excitation(A4 6p)
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「旋回噴流の特性とその応用」

           話題提供者:井口 学 先生(北海道大学)

       講演内容
a.研究の背景・目的について
b.旋回特性の評価パラメータについて      

鉄鋼関係の高炉の反応容器内では非常に高温である溶鉱を攪拌する必要があり,その際,高温でかつ不必要な成分混入を避けるため,機械攪拌よりはガス注入攪拌,電磁攪拌などの攪拌方法が採用されること,これら方法により有効なかき混ぜ制御はもちろんのことその制御時の動特性を把握することが重要であること,など研究の背景について述べられた.特に今回は液体を吹きこむことで生じる旋回流の特性について検討された結果について示された.高温時の溶鉱の粘性は水の特性に近く,実験には反応器を模擬した円筒容器に水を入れ,容器の下部の中心ならびに偏心させた位置にノズルを設置し,PIV計測,可視化データから内部流動特性について評価された.容器内では旋回に伴い,液面上では水面波が生じ,液面高さにより水波特性と同じく浅水波,深水波と分類されること,またスロッシングやロスビ波などの流動現象としてのアナロジの視点からデータ整理法の提案と結果の説明があった.旋回特性の評価パラメータとして要求される発生領域,開始時間,終了時間,周期,旋回の発生に伴う液表面の振動振幅,また均質混合時間について評価された結果,旋回発生領域,開始時間,終了時間,周期,振動はすべて実験式,理論式により整理,予測が可能であること,偏心した位置にノズルを設置した場合の旋回運動では旋回発生領域がノズル位置から遠ざかるほど狭くなる傾向が見られるが,基本特性は中心にノズルを設置したときの実験式及び理論式で整理できることを明らかにしたことを報告された.しかしながら,実際の高炉内では容器と内部流体との壁面の濡れ状態は非常に複雑で,水の場合との境界条件の違いも大きいことから,これらの結果の解釈には注意が必要であることも補足された.
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「菱形角柱群流路内のフリップ・フロップ流れの発現メカニズム」

           話題提供者:梅田眞三郎 先生(福山大学)

       講演内容
a.研究の背景,推移
b.流れ場の動的特性について
c.発現メカニズムについて

可視化結果により,フリップフロップ現象や流れ場の様子について説明されたあと,X字形交差流れを出発点として菱形角柱群流れに至った経緯や応用例について述べられた.交差管は交差部に二つの流れが合流し,そこから再び二つに分流する管であるが,単体の交差部で説明される特徴的な流動特性として,交差角60度で配置すると上流側での流量比が異なっても分流後の下流側では流量比が同じになること,30度の場合,上流側の一方の管を閉じると管路内流動抵抗が減少し,流量増加させることが可能であることなどの基本特性について説明された.また上流側での菱形角柱でのコアンダ効果の発生の状況に応じて渦形成が変わり下流側での流れの分岐特性が変化することがあることの説明もあった.これら交差管が連続し設置された状況は,菱形の角柱が千鳥配置で連続的に配置されたことと幾何学的に同じであることから,流れ方向に角柱列を最大6列まで配置した実験が行われた.その際フリップフロップ現象は流路断面形状が正方形に近い状況が発現しやすく,また発現は3列以上の場合に限られることが述べられた.PIVの可視化やLDVでのスペクトルから,単独角柱ではカルマン渦放出が行われること,フリップフロップ現象が生じたときは流路内に強い縦渦が発生していること,6列配置の場合の3,4列目では渦構造に関連し,角柱周囲でスイッチングが生じていること,さらにスイッチング状態にある合流部中央からわずか下流に偏移した位置に,講演者の定義するエネルギ供給点が存在することや,菱形角柱前縁の前方(干渉節目点)においてもエッジトーン現象が生じていることについて明らかにした結果の報告があった.また,上流側の影響について調べるため乱流格子を配置した場合の結果についても示され,最後にこれら結果からフリップフロップ発現のメカニズムについて総括された.

(配布資料)
No. 8-5. 本講演用Power point原稿の写し(A4 9p)
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<.第9回研究分科会(話題提供3件)>
日 時:平成16年11月24日(水) 13:00~17:00 
場 所:学術研究都市ひびきの 産学連携センター内 小会議室2(北九州市)
出席者:18名
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「T字形合流間内の流れ」

           話題提供者:檜原 秀樹 先生 (愛媛大学)

       講演内容
a.研究の背景,目的
b.T字型合流管の特性
c.乱流プロモータによる渦制御            

高速増殖炉にある配管の合流部下流側では,異なる温度状態にある流体が混合することで温度揺らぎが生じ,それが原因となって熱疲労現象であるサーマルストライピングが起こる事,その対策として,流れの非定常現象の詳細な理解の必要性が説明された.この合流管の代表的なモデル流れであるT字管では,1)主管のレイノルズ数,枝管と主管の流速比の違いにより,主管で生じる流れのパターンは(a)成層分離流(b)偏向噴流(c)衝突噴流と大きく3つに分類されること,2)流動パターンは主管,枝管の慣性抵抗から類推される口径比とレイノルズ数を組み合わせた2つのパラメータにより整理されることが明らかにされた.この3つのパターンのうち偏向噴流では周期的な渦放出現象があり,サーマルトライピング現象に深く関わる現象と考えられることから可視化結果からも詳細に検討された.その結果,1)主管ではアーチ状の渦が形成されるが,この渦は枝管からの流れの偏向による遠心力の作用で生じる縦渦と主流と枝管流の界面付近の不安定性により生じる横渦が合わされたものであること,2)アーチ渦の周波数は実験で行われた範囲内ではレイノルズ数,流速比,口径比をパラメータにして一つの関数で整理されることが明らかにされた.さらにこれら発生する渦構造による変動を低減するため,合流部の下流側に楔形状を持つ乱流プロモータを取り付け,その影響が調べられた.その結果,プロモータにより偏向噴流から衝突噴流へ遷移する流速比は小さくなることから,温度揺らぎ高振幅成分の発生を抑制する可能性や,渦の形成が変調されることで温度揺らぎの低周波成分が緩和されることから,サーマルストライピング現象の対策案としての可能性が示された.さらに広範なプロモータのパラメータ調査は今後の課題とされた.

(配布資料)
No.9-3-1. 「T字型合流管内の流れ(第1報 流れの特性と枝管からの流れがつくる渦列)」(機論) 
No.9-3-2. 「配管系サーマルストライピングを引き起こす流体振動現象の解明」(可視化情報)
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「超音速平面噴流におけるマッハ波放射」

    話題提供者:前川 博   先生 (広島大学)
講演内容
a.超音速噴流の基本特性について
(線形安定解析,2次元DNS,三次元時間発展DNSによる評価)
b.三次元空間発展のDNSによる超音速平面噴流について      

超音速噴流による騒音問題として,スクリーチノイズ,衝撃波ノイズ,マッハ波(乱流)ノイズのうち,前者の二つに比べ,マッハ波の音発生機構の理解が不十分であることから,騒音対策のために乱流現象の詳細な理解が必要であるとの説明があった.講演者らによる線形安定解析の結果から,1)対流マッハ数が0.8以下では二次元非対称モードが,マッハ数が0.8から1.5では三次元非対称モードが,1.5以上では二次元対称モードが支配的であること,2)非対称モードの成長率はレイノルズ数の減少とともに下がること,また,二次元空間発展DNSの結果から,3)超音速の位相速度を持つ非対称モードが下流での音波の生成に寄与し,対称モードは放射音の発生には寄与しないこと,三次元の時間発展のDNSから,4)斜めの非対称モードの成長がラムダ型の構造を誘起することなどの基本特性について明らかにした結果の説明があった.また,講演者らが独自に提案した風上型コンパクトスキームならびに高次精度スキームての原理的な特性についても丁寧な解説があった.3次元空間発展のDNSでは先に説明のあった不安定モードに加え,ランダム擾乱を与えた流入条件についての空間発展の特性が調べられた.その結果,上流側の撹乱はせん断層や放射音特性に強く影響を与え,1)3次元非対称モードはラムダ状の構造を形成し,せん断層の拡大に大きな影響を及ぼすこと,2)超音速の位相速度を持つ二次元対称モードは,結果的にマッハ波の放射を導くことや,3)ランダムノイズの場合よりも斜めモードの場合,わずかに音圧が下がることが明らかにされ,ノズル出口でのモード操作による放射音制御の可能性が示された.

(配布資料)
No.9-4. Transition of supersonic plane jet due to symmetric/antisymmetric unstable modes(A4 17p)
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「一様流に対向する円形噴流」

           話題提供者: 宮田 勝文 先生 (山梨大学)

       講演内容
a.研究の背景
b.流れ場の特性について

燃焼や混合のための基本的手段の一つとして,噴流に反対向きの一様流が対向する本流れ場についての説明があった.またこの流れ場の,特に噴流流出速度/一様流の速度比が小さ領域から大きい領域の空気噴流を対象としていることに研究の特徴があることが述べられた.計測データの軸対称性のチェックや速度比が異なる場合のそれぞれの断面内平均速度ベクトル図ならびに中心軸上での主流方向速度のヒストグラム特性が示され,特に速度比が1に近い場合の計測の困難さについても言及された.噴流到達距離の特性は講演者の実験結果を整理した結果,提案する近似式が従来の場合と比べ広範囲の速度比のわたり結果を整理することができることが示された.また,静圧管により噴流軸上の圧力分布の結果が示され,下流側で周囲大気圧となる位置が噴流到達距離に対応していること,このよどみ点近傍での噴流の主流方向速度分布は速度比によらず比較的相似性があることが示された.またノズルの形状の影響について調べるためノズル出口の周囲に端板を取り付けその影響についても調べられた.その結果,軸上流れ方向速度は,速度比が小さい場合のその影響が出ること,到達距離も速度比が小さい場合にその影響がわずかに現われることが示された.また対向する一様流中の乱れの影響について調べるため,乱流格子として,配置する円柱の径とピッチを変え,その影響が調べられたが,調べられたパラメータの範囲内では噴流軸上の主流方向分布や到達距離の特性に大きな影響を与えない結果となった.質疑では本研究でのよどみ点の定義についての解釈が問題となり,議論となった.

(配布資料)
No.9-5. 本講演用Power point原稿の写し(A4 8p)

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<.第6回研究分科会(話題提供3件)>
日 時:平成17年2月5日(土)13:00~16:10 
場 所:日本大学理工学部(駿河台校舎)5号館3階 特別会議室
出席者:15名
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「反応性流体噴流における乱流発達の遅延+
剥離噴流と自由液面の相互作用による自励振動現象 」

話題提供者:染矢 聡   先生(産業技術総合研究所)

       講演内容
a.円筒容器内と挿入物体の相互作用による自励振動現象
b.矩形容器内の場合の自励振動現象
c.反応性流体噴流について

高速増殖炉におけるプレナム内の自由液面の自励振動について調べることを目的とし,これら装置を模擬した実験装置(水の溜められた円筒容器に対し,容器の底から噴流の吹き込み,容器内の水面側からは制御棒が模擬された円筒型構造物が挿入されている)の説明ならびに関連する自励振動現象の簡単な説明があった.底面からの噴流流入速度と水面からの円筒型構造物の挿入長さをパラメータとし,液面振動のパターンは,径方向に節のある軸対象なスロッシングモードと,径ならびに周方向にそれぞれ1つずつ節を持つ非対称なモードに大別されること,それぞれのモードは構造物の挿入長さの違いによりさらにその特性が分類されることが示された.各モードの振動数,液面変動に関する可視化結果から,これらのモードの形成は噴流と構造物が容器内で衝突し,剥離したあと自由表面との干渉で誘起された流れにより規定されることが明らかにされた.さらに矩形容器内に平面噴流が吹き込む場合の結果についても液面挙動や振動周期について詳細に検討された結果が報告された.反応性流体噴流の研究目的は燃焼に関連した基礎研究,あるいはマイクロチャネル等の微細機器内での二層流界面現象に関わる基礎研究であることが述べられた.実験では1mmのノズルから,周囲流体である水に,希釈したアンモニアあるいは,希釈した酢酸を噴出させてた場合,また,周囲流体と噴流のそれぞれをアンモニアと酢酸の組み合わせにした場合の可視化結果や噴流幅の計測結果が示された.その結果,水も含めた三種類の流体では密度はほぼ同じとなるが,反応の生じるアンモニアと酢酸の組み合わせでのみ,噴流速度が比較的遅い場合において顕著に発達の遅れる特異現象が見出された.緩やかな反応系であるので熱的な影響も無視できることから,この乱流発達の遅延の原因については現在不明でその解析は今後の課題であるとされたが,質疑においてもその要因について活発な議論となった.

(配布資料)
No.10-3-1. 「噴流と自由液面との相互作用による自励振動現象」(噴流工学) 
No.10-3-2. 「噴流と自由液面との相互作用による自励振動現象
(第2報:振動発生および振動数決定メカニズム)(噴流工学)
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「周囲と密度の異なる噴流の拡散」

      話題提供者: 木村 元昭  先生 (日本大学)
講演内容
a.研究の背景
b.流れ場の特性について

燃焼や混合のための基本特性の理解のため,周囲大気と密度の異なるヘリウムならびに二酸化炭素の二種類の噴流の特性について調べた結果が報告された.密度の軽いヘリウムでは,ノズル出口直後から急激に乱れ,周囲へ拡散するなど,密度差の大きい浮力噴流の場合における著しい特徴が可視化結果から示された.噴流拡散特性を計測するための熱線濃度計プローブの原理から,動特性や検定特性についての説明もあった.空気噴流を含めた3種類の場合に対する等速度分布や軸方向速度分布,半値幅等の噴流の基本特性に関する計測データが示され,特にヘリウムについては強い拡散が生じている様子が定量的にも示された.速度変動のスペクトル解析の結果から算出されたストロハル数について検討した結果,密度による補正とノズル出口速度で定義されるレイノルズ数で整理すると統一した式で表現されることが見出された.噴流の下流側のそれぞれの位置で速度・濃度の確立密度関数に関する変遷の過程についての詳細も示された.また浮力噴流では浮力の作用する方向が噴流の流れ方向と一致する正の場合と,逆に浮力が噴流の流れを押しとどめる負の場合が条件としてあり,その両者の場合について噴流軸上での速度・濃度減衰の特性やその分布特性が比較され,浮力の作用の違いがノズル出口下流側にいくほど顕著となることが定量的に明らかにされた.さらにエントレインメント量についても評価され,前述のように密度補正するとガスの種類に関係なく一元的に整理されることを見出された結果の報告があった.
結果についても簡単に紹介があった.

(配布資料)
No.10-4. 本講演用Power point原稿の写し(A4 7p)

 


オーガナイズドセッションの企画,実施(計2会議)

国内の学術会議においてオガナイズドセッションを企画し,実行した.

      <2004年度 年次大会>
          開催日:2004年9月6日~8日 
          開催地:北海道大学
          オーガナイズドセッション:「流れ制御の技術」
                オーガナイザ:豊田国昭,社河内敏彦,福西祐
               40件あまりの申し込みを受け付け,7セッション開催した.

              フォーラム  :「噴流現象の先端的応用」
                オーガナイザ: 社河内敏彦,豊田国昭
                   笠木 伸英(東京大学)
                         「噴流の知的能動制御への挑戦」
                   奈良林 直(東芝)
                         「蒸気インジェクター内の噴流現象と次世代原子炉への適用」
                   藤川 重雄(北海道大学)
                         「水中ウォータジェットによる有機化合物の分解」  
                   堀 元人(富士電機アドバンストテクノロジ)
                         「温水の衝突噴流を用いた高効率加熱方法の研究」
                   厨川 常元(東北大学)
                         「M4プロセスのアブレイシブジェット加工」

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     <流体工学部門講演会>
          開催日:2004年11月25日~26日 
          開催地:北九州市学術研究都市
          オーガナイズドセッション:「噴流,後流及びはく離流れの基礎と応用」
          オーガナイザ:社河内敏彦,田中和博,内山知実
               40件近くの申し込みを受け付け,7セッション開催した.


国際会議(ICJWSF:2005年開催)の企画,準備

当分科会を中心に国際会議について実施計画が検討されている.
      (ホームページ http://www.ees.mach.mie-u.ac.jp/ICJWSF/

    1.日程は以下のスケジュールで運用されている.
        Submission of Abstracts      : November 26, 2004
        Notification of Abstract Acceptance: December 15, 2004
        Draft Paper due to Organizers   : March   31, 2005
        Notification of Paper Acceptance : May 15, 2005
        Final Paper due to Organizers   : June   30, 2005

       現時点では上記スケジュールで進行中で,現在140件程度(うち1/3は海外)の
        アブストラクトの投稿があった.

    2.広報活動
       ・各委員によるICJWSFのパンフレットの配布活動
       ・関連学術団体への広報依頼
        を実施し,参加の呼びかけを行った.

 


その他(分科会委員の追加)

     当初計画に加えてさらに多岐にわたる調査研究の要望ならびに必要性から,
    当初委員(35名)に新委員(3名)の追加があった.
    新旧含めた現時点での委員名は以下のとおりである.

   --------委員名簿(五十音順,敬称略,2004年度末現在)---------------
主査:社河内 敏彦(三重大)
幹事:辻本 公一(三重大)                
委員:安達 昭夫((株)富士電機アドバンストテクノロジー) 池田 敏彦(信州大) 
    井口 学 (北大)   一宮 浩市(山梨大)   井上 吉弘(岐阜大)
    今尾 茂樹(岐阜大)   内山 知実(名大)   梅田眞三郎(福山大)
    小川 信夫(東理大)   木綿 隆弘(金沢大)   木村 元昭(日本大)
    高曽 徹 (九大)   清水 誠二(広工大)   鈴木 雄二(東大)
   関下 信正(豊橋技科大)   染矢 聡 (産総研)   高杉 信秀((株)スギノマシン)
    谷口 伸行(東大 )   豊田 国昭(北工大)   中島 正弘(鹿児島高専)
    中部 主敬(大府大)    奈良林 直((株)東芝)   野崎 勉 (鹿大)
   菱田 公一(慶應大)   檜原 秀樹(愛媛大)   桧和田宗彦 (岐阜大)
    前川 博 (広島大)   宮越 勝美(北見工大)   宮田 勝文(山梨大) 
    村松 旦典(日本大)   望月 修 (東洋大)    望月 信介(山口大) 
    山下新太郎(岐阜大)   湯 晋一 (九工大)    脇本 辰郎(大市大)
    安藤 俊剛(三重大)
     計35名

更新日:2005.5.9