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第85期(2007年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

酒井 康彦 (名古屋大学)
早瀬 敏幸 (東北大学)

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一般表彰(フロンティア表彰)


酒井 康彦  (名古屋大学)

受賞理由:

 乱流中の物質拡散場の統計的性質の解明と確率的数値計算法の応用において先駆的研究を行った.特に,液相乱流中の化学反応系における多成分物質変動濃度の同時測定が可能な光ファイバ型濃度計を開発し,乱流混合と化学反応干渉に関する知見を深めた.また,乱流と拡散場の持つ確率的特性に注目し,確率密度関数法やランダムフーリエモード法と呼ばれる確率的計算法の応用研究を推進するなど,流体工学の新たな研究分野を開拓した.

受賞のコメント:

  この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)という大変名誉な表彰を賜り,光栄に存じます.推薦者をはじめ,関係者の皆様に厚く御礼申し上げます.

  今回の受賞対象となった研究は,私が昭和53年(1978年)に名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程機械工学及び機械工学第二専攻,「流体機械講座」に配属された時以来30年近くにわたり一貫して取り組んで来たものです.当時の指導教官である中村育雄先生(現名大名誉教授)と宮田勝文先生(現山梨大教授)のもとで,私たちは液相での高シュミット数物質拡散場・混合・化学反応場の統計的性質を解明するために,「吸光スペクトル法」と呼ばれる新しい計測方法を提案し,実際に最大3種類の吸光物質の乱流変動濃度の同時測定が可能な光ファイバ型変動濃度計を開発しました.この多成分濃度計は液相乱流噴流中の連続競争反応場に関わる全成分の瞬時濃度の同時測定に使用され,現在もなお液相乱流混合・反応現象の解明に威力を発揮しております.

  一方,実験と同時に,確率過程モデルやランダムフーリエモード法と呼ばれる乱流拡散・混合場の確率的数値計算法の開発に力を注いで参りました.確率過程モデルによる計算手法としては,いわゆる確率密度関数法(PDF法)がありますが,その数学理論は当時(1980年代後半)の私たちにはきわめて難解であり,中村育雄先生や角田博之さん(現山梨大准教授)とともに,関連する解説記事(S.B.Pope, Prog. Energy Com. Sci., 1985, Vol.11, 119- 192)を輪読し,なんとか理解しよう努力いたしました.このとき得た知識は,現在の私の研究推進の原動力になっています.また,ランダムフーリエモード法については,私が英国ケンブリッジ大学の応用数学・理論物理学科(DAMTP)に滞在中(1989~1990)にJ.C.R.Hunt先生(現University College London教授)やJ.C.Fungさん(現香港科技大教授)の指導のもとで,習得した擬似乱流場のシミュレーション法であり,この手法は,現在乱流中の物体周りの拡散場・拡散場のシミュレーションなどに応用されております.

  私たちの研究対象である乱流拡散・混合現象は極めて多種多様であり,依然として不明な点が数多く残されていますが,本受賞を契機にさらなる研究を重ね,この分野の発展に少しでも貢献していきたいと考えています.

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一般表彰(フロンティア表彰)


早瀬 敏幸 (東北大学)

受賞理由:

 実験計測と数値解析を一体化した新たな流体解析手法を提案し,これに基づき超音波計測融合血流解析手法を構築して医療臨床に応用するなど,複雑な流動システムへ幅広く適用可能な計測融合解析技術の創出により,流体工学の新たな研究分野を開拓した.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門一般表彰(フロンティア表彰)を賜り,大変光栄に存じます.推薦者,関係各位ならびにこれまで研究面でご指導ご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げます.

 制御理論のオブザーバの概念を流れの数値シミュレーションに応用して,実現象の流れ場を再現する研究を始めて10年余りになります.最初は,管内乱流のフィードバック制御のための状態量の推定問題の数値実験より始め,その後,風洞内の角柱後流のカルマン渦がリアルタイムに再現できることを実験で確認しました.最近では,超音波画像診断装置による生体内の血流計測に応用する研究等を行っています.

 計測と数値シミュレーションの融合により実現象を再現する問題は色々な分野で研究されています.最も身近なところでは,気象予報の分野でデータ同化と呼ばれて古くから研究されており,最新の4次元データ同化法では変分法を用いた手法が主流です.カルマンフィルタも気象や航空宇宙など幅広い分野で用いられています.変分法に比べて計算負荷が小さいのが特長です.流れの可視化計測の分野では,粒子画像から得られた多数の速度ベクトルの測定値と流れの基礎方程式を基に流れ場を再現する手法が研究されています.また,逆問題で用いられるティホノフ正則化を用いた融合手法や,ニューラルネットワークによる実現象の逆システムの研究などもあります.私共の研究は,上記のカルマンフィルタから計測誤差の影響を取り除いたオブザーバを流れ解析に応用し,システムのモデルとして流れの数値シミュレーションを用いたものに相当します.流れの数値シミュレーションに,計測結果と計算結果の差に比例するフィードバック項を追加することにより,計算負荷の低減や計算精度の向上,実現象の外乱等の影響の再現などといった特長が得られます.

 今回の受賞を契機に,幅広い分野の流体問題の解決に向けて,なおいっそう研究を進めていきたいと考えております.

更新日:2007.11.29