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円柱の後ろに回り込む流れ

まずは見てみよう!

どんな実験?

実験手順と種あかし

  • 扇風機の流れの中に発泡スチロールの円柱を置いて流れのようすを観察してみます。円柱の片側ではつい立てを立てて風をさえぎっています。また、流れを見るためにティッシュペーパーを細く切って棒に付けたものを用意しました。
  • 円柱の横の位置では右方向に流れています。
  • 少し下流側に移動させると、流れは円柱から離れて右方向に流出していることがわかります。
  • 円柱の真後ろあたりでは、画面で下方向、つまり円柱に沿って進むのとは逆方向に流れています。ころとき、円柱の背後では流れが回り込めずに渦ができていて、このような現象を「はく離」と呼びます。一様な流れ(領域全体が同一方向に流れている流れ。一様流と呼ぶ)の中に物体を置くと、多くの場合はこのようなはく離が起きます。
  • 次に、ドライヤーを使って円柱の一部分だけに流れを当てます。ドライヤー、ホース、ノズル、穴などから噴出する流れを「噴流」といいます。このような噴流では一様流に比べてはく離が起きにくく、円柱に沿って流れが回り込んでいるようすがわかります。
  • 噴流は曲面に沿って曲がって進み、一様流に比べてはく離が起きにくいという性質があります。これを「コアンダ効果」といいます。したがって、扇風機(一様流)では早い位置ではく離が起こり、ドライヤー(噴流)でははく離が抑えられ、円柱の後ろ側まで流れが回り込みました。
  • ドライヤーを当てるときのコツは、円柱に接するよりももっと内側、つまり円柱に一部流れが当たるくらいにすることです。円柱の前半分で強制的に円柱に沿った流れにすることで、それ以降も円柱に付着しやすくすることができます。また、ドライヤーにノズルを付けて流れを細く、速くすると効果的です。

【補足説明】

  • 一様流の場合、ある流線に沿って圧力の変化をみると、上流側で大気圧、円柱横を通過するときは大気圧より低圧、下流側で再び大気圧になります。このとき円柱横で低圧になった流れはその後、大気圧に向かって上昇します。圧力に逆らって流れが進むため「はく離」が起こりやすくなります。一方、噴流では一つの流線上で、圧力はどの場所でも大気側では大気圧になります。それらの部分では進行方向に圧力変化がなく一様流の場合に比べて「はく離」が起きにくくなります。
  • さらに、流れの前半部では強制的に曲面に沿って曲がります。そうすると、曲がった流線の外周側で高圧、内周側で低圧という圧力差ができ(流線曲率の定理)、この圧力差がその後の流れにおいて曲がりを持続させようとする効果を持ち、コンアンダ効果につながるのです。また、流線の曲がりの内周側では圧力が下がることから、円柱表面で圧力が下がることが説明でき、円柱が流れに吸い寄せられることがわかります。
【キーワード】 コアンダ効果
【関連項目】 吸い寄せられるスプーンボールを棒で支える
【参考】 今井功「流体力学前編」裳華房、P66-67.
白倉昌明ほか「流れ学(上)」コロナ社、P262.
日本機械学会編「流れのふしぎ」講談社ブルーバックス、P128-133.
石綿良三「図解雑学流体力学」ナツメ社、P214-215 および P206-209.

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更新日:2014.6.1