流れの読み物

Home > 流れの読み物 > ニュースレター > 2022年10月号

流れ 2022年10月号 目次

― 特集テーマ:第20回 流れの夢コンテスト ―

  1. 巻頭言
    (安,本澤)
  2. 流れの夢コンテスト開催報告
    能見 基彦(荏原製作所)
  3. (最優秀賞)安心安全平和な流れ -流れの夢コンテスト2022に参加して-
    玉田 洋一朗,吉田 将太,大場 直哉,久山 晃平(早稲田大学,チーム名:新鮮空気)
  4. (関東支部賞)第20回流れの夢コンテスト 液体金属クラウンの魅力
    小野塚 龍斗,西尾 龍乃介,大野 健士,林田 健,武藤 龍平,堀川 虎之介
    (東京工業大学,チーム名:Liquid Metal Crowns)
  5. (優秀賞)流れの夢コンテスト回顧録
    宇田 竣哉,金田 好晴(日本大学,チーム名:MECST)
  6. (一樹賞)持ち運び電気トモグラフィシステムによる実演と応用
    瀬川 颯(千葉大学,チーム名:スラグアイロンチーム)

 

流れの夢コンテスト開催報告

流れの夢コンテスト実行委員長 能見基彦(荏原製作所)

 去る8月7日、早稲田大学121号館リサーチイノベーションセンターにて、日本機械学会の「機械の日の」のイベントの一環として第20回「流れの夢コンテスト」が開催され、大盛況の内に幕を閉じました。本稿は、その開催報告ですが、それに先立ち、従来とはかなり異なる開催形式となったいきさつからご紹介したいと思います。

 筆者は、2018年に第96期流体工学部門長を拝命しましたが、それまで恥ずかしながら「流れの夢コンテスト」をじっくり拝見したことはありませんでした。同年11月に室蘭市で開催された、第16回「流れの夢コンテスト」では、ちょうど市町村で開かれる夏祭りの出店の屋台のような感じで多彩な展示が並び、学生さんがはつらつと工夫を凝らした成果を紹介し、多くの参加者も楽しそうに学生さんと議論する様子を見て、大きな感銘を受けました。

 その後、2021年に、筆者は関東支部長を仰せつかりました。関東支部は、都県単位のブロックの活動が非常に盛んな反面、全ブロック参加の行事が、関東支部講演会を除くとあまり無いように感じ、なにかしら村祭り的なことでブロック間の親睦を図れないか思案しました。その時に、かつて室蘭で見た「流れの夢コンテスト」を思い出し、一回限りの企画としてブロック対抗「流れの夢コンテスト関東支部版」を開催することはどうかと考えました。関東支部の副支部長(現支部長)の天野嘉春先生とご相談し、関東支部役員のご意見を伺ったところ、幸いご賛同を戴くことができました。当時、まだ新型コロナ禍の脅威が大きく、またその年の開催では時間的な余裕も無いので、2022年に対面形式で開催する計画としました。もちろん「流れの夢コンテスト」のコンテンツは流体工学部門のものですので、部門のご了承が必要です。そこで流体工学部門に後援していただくという形式で実施できないか、流体工学部門にご相談したところ、流体工学部門長(当時)の山本悟先生より、部門が開催する本家「流れの夢コンテスト」と一本化するご提案を頂戴しました。新型コロナ禍のため2020年度と2021年度の「流れの夢コンテスト」はリモートや動画展示開催となっておりましたが、記念すべき第20回は、二年振りの対面形式であり、なおかつ流体工学部門と関東支部の共同開催という、異例ずくめの船出となりました。

 2022年度となり、本格的な作業が始まりました。今期の流体工学部門長の宮川和芳先生は、奇しくも関東支部の東京ブロック長でもあり、なおかつ8月7日の「機械の日」の実行委員長でもいらっしゃったところから、「流れの夢コンテスト」を8月7日の「機械の日」の行事の一環として東京で開催することが決定されました。本来の「流れの夢コンテスト」は流体工学部門講演会の併催行事として11月開催であり、8月開催では例年とくらべて準備期間が著しく短くなる懸念が当初からありました。そこは参加団体の熱意のみ(?)を頼りに、なんとか乗り切る方針としました。開催場所は、建設後間もなく大変綺麗でモダンな建物である早稲田大学121号館となりました。奇しくも、今期の関東支部長の天野嘉春先生も、宮川先生も早稲田大学の御所属であり、おおいに地の利を得たこととなりました。「流れの夢コンテスト」のキャッチコピーでもあるコンテストのテーマは、「安全・平和・安心な社会を実現する流れを語ろう」に決まりました。その他、もろもろの準備を進める中で、泥縄式ではありますが、「流れの夢コンテスト」実行委員会が編成されることになりました。宮川先生をはじめ、第17回「流れの夢コンテスト」実行委員長でいらっしゃった鈴木康方先生(日本大学)、今期の関東支部事業幹事でいらっしゃる小川雅先生(工学院大学)、今期の流体工学部門広報委員長でいらっしゃる安炳辰氏(荏原製作所)に、委員就任をご快諾いただきました。また日本機械学会から大黒卓様、熊谷理香様の強力なご支援をいただけることになりました。実行委員長は、言い出しっぺのなりゆき上、筆者が合い勤めることとなりました。こうして「七人の侍」(?)が集まり準備が加速することとなりました。細部を決める議論を経て、ようやく5月11日にホームページが立ち上がり参加団体の募集が始まりました。前述のように、例年と比べて大変短い準備期間となったため、本当に手を挙げるところがあるのか?と祈るような気持ちで待ち受けておりましたが、6月9日に最初の申し込みがありました。それから少しずつ参加校が増え、最終的には幸いにも7校ものチームにご参加いただけることになりました。残りの期間、鈴木先生からは第17回開催時の貴重なノウハウをご教示いただき、それを、ほぼそのまま今回も実行し、小川先生と安氏には、それぞれ支部と部門と実行委員会との多くの調整事項を迅速かつ的確に処理していただきました。大黒様と熊谷様は、ホームページの立ち上げからコンテンツ追加、そして参加団体との多岐にわたる連絡を丁寧に進めていただきました。丁度その頃、新型コロナ禍の第七波で、全国の患者数が急増する時期と重なり、いつ国や東京都から、緊急事態宣言の発令などあるのではと不安を抱えておりましたが、なんとか事前の現地下見と準備も終え、ついに開催当日の朝を迎えることができました。

 以上、前置きが大変長くなりましたが、報告の部に移ることと致します。

第20回の流れの夢コンテストの参加チームとタイトル、作品概要は以下の通りです

No.

応募代表者

所属

グループ名称

作品タイトル

概要

1

西塚大悟

北海道大学

ホクホク北大チーム

恐怖の強風~イヤな音~

安全・安心・平和な社会の実現には恐怖や不安の正体を知ることが重要です。そこで、電線などに風が当たったときに生じる「ひゅー」という音、エオルス音を利用して不快な音を発生させました。

2

安河内慶

埼玉大学

コアンダーズ

rescue the earth~地球を救え~

概要:コアンダ効果の原理を利用し、地球及び月を安定的に浮かせることで、テーマである「安全・平和・安心な社会」を表現しました。

3

金田好晴

日本大学

MECST

安全の為の風車の変形法の提案

安心・安全・平和な社会の実現のために、私たちに何ができるのか。そこで私たちは、SDGsでも注目されている風力発電に着目し、強風にも耐えられるような風車の変形機構を提案することで、将来の私たちの暮らしをより良くすることに貢献したい。

4

篠原慎司

明星大学

vs嵐

マンションを見立てた模型を作り、風の抵抗を減らせる形や模型を複数置くことによる変化を見比べ、新たな配置を見つけましょう!

5

瀬川颯

千葉大学

スラグアイロンチーム

持ち運び電気トモグラフィシステム

電気インピーダンストモグラフィーの産業への応用について発表します.

6

小野塚龍斗

東京工業大学

Liquid Metal Crowns

「液体金属クラウン」を作ろう!

薄く張った液面に、液体を一滴落とすと「ミルククラウン」と呼ばれる美しい王冠の形が形成される。本作品では、「液体金属」を用いて「液体金属クラウン」の形成を試みた。「液体金属」は核融合炉や海水淡水化技術への応用が期待されており、「安全・平和・安心な社会」への可能性を秘めている。作品を通じて、多くの方にその魅力を知っていただきたい

7

吉田 将太

早稲田大学

新鮮空気

3次元コンピュータシミュレーションを用いた換気の最適化

昨今話題の換気について、3Dモデリングと数値計算を用いたシミュレーションにより、効率よく換気することができる条件を探究しました。

(以上、申込み順)

 8月7日は、まず各チームによる、展示作品を紹介するショートプレゼンから始まりました。ユーモアあふれる寸劇形式や、学会発表のようなフォーマルタイプまで多彩な内容に、聴衆も笑顔で楽しんでいました。会場からの質問には、本格的な技術的質問も多く、熱心な議論も繰り広げられました。また日本機械学会長の加藤千幸先生も来場され、最初から最後まで、ご参加いたくことができました。


写真 筆者による開会のご挨拶


写真 プレゼンテーション会場にオバケ現る!

 その後、会場を変え、各チームによる実物展示、実演が開催されました。ここで各チームの内容を紹介します。

恐怖の強風~イヤな音~ (ホクホク北大チーム)

 電線のエオルス音などの不快な音を意欲的に考察したチーム。幽霊の扮装をして、強力なアピールは随一でした。


写真 恐怖の強風~イヤな音~ (ホクホク北大チーム)

「液体金属クラウン」を作ろう!(Liquid Metal Crowns)

 液体金属を使って、いわゆるミルククラウンを作る試み。普段、なかなか目にすることのない液体金属に、観衆のみなさんは興味津々でした。


写真 「液体金属クラウン」を作ろう!(Liquid Metal Crowns)

rescue the earth~地球を救え~ (コアンダーズ)

 地球と月を浮かせて救うというファンタジックな設定! コアンダー効果で二つの球体が浮かんでいる情景は異色の迫力でした。


写真 rescue the earth~地球を救え~ (コアンダーズ)

安全の為の風車の変形法の提案 (MECST)

 多種多様な、変形する風車が並び、目に楽しい展示。学生さんのさまざまなアイデアを見ることができます。一部、破損するものがでてきたのは、あるあるのご愛敬でした。


写真 安全の為の風車の変形法の提案 (MECST)

持ち運び電気トモグラフィシステム (スラグアイロンチーム)

 会場で、実際の水中物体のCT画像をリアルタイムに出力する様は、いろいろなアプリケーションへの展開を想像させ、ワクワクします。


写真 持ち運び電気トモグラフィシステム (スラグアイロンチーム)

vs嵐 (嵐)

 小型送風機とミスト発生器を使い、小さいながら本格的な建築風洞を現場で作ってしまう力技には、感心させられました。不思議な形のビル模型は、実在する建築物を模したものだそうです。


写真 vs嵐 (嵐)

3次元コンピュータシミュレーションを用いた換気の最適化 (新鮮空気)

 現在、社会で喫緊の課題を取り上げています。富岳コンピューターが無くてもこんなことができるんだという学生さんの心意気に敬意を表します。


写真 3次元コンピュータシミュレーションを用いた換気の最適化 (新鮮空気)

 1時間半に渡る実演では、各ブースでワイワイガヤガヤと賑やかに議論が繰り広げられました。事前登録した来場者の他、同日、同じ会場で時開催された「機械の日」行事参加者の方や、早稲田大学の研究室ツアー参加者の方など多数の観客も加わり、総参加者数は、約70名を数え、大変な盛況となりました。


写真 会場の様子


写真 興味津々の加藤会長(左端)

 例年の「流れの夢コンテスト」では、特別講演を合わせて開催することが通例ですが、今回、各参加チームには、「機械の日」の行事として実施される記念講演三件を御聴講いただきました。この特別講演に関しては、以下のホームページで詳細をご覧ください。
https://www.jsme.or.jp/event/machine-day-2022/

 その後、事務局による厳正な審査を経て、表彰式が行われました。筆者の司会の元、宮川先生より各賞の賞状が授与されました。また今回、特別に新設された関東支部賞は、天野先生より賞状が授与されました。表彰の結果を以下に表します。

最優秀賞  3次元コンピュータシミュレーションを用いた換気の最適化 (新鮮空気)
関東支部賞 「液体金属クラウン」を作ろう!(Liquid Metal Crowns)
優秀賞   安全の為の風車の変形法の提案 (MECST)
一樹賞   持ち運び電気トモグラフィシステム (スラグアイロンチーム)
参加功労賞 恐怖の強風~イヤな音~ (ホクホク北大チーム)
参加功労賞 rescue the earth~地球を救え~ (コアンダーズ)
参加功労賞 vs嵐 (嵐) 
以上、参加功労書は順不同


写真 流体工学部門長・宮川先生より最優秀賞の授与


写真 関東支部長・天野先生より関東支部賞の授与

 最後に加藤会長より「(当日開催された)機械遺産認定式で機械工学の過去を振り返り、記念講演で機械工学の現在を知り、夢コンテストで機械工学の未来を担う学生さんの活動を見た。」というお言葉を頂戴し、無事、全日程を終了しました。


写真 加藤会長による御挨拶

謝辞

 第20回「流れの夢コンテスト」開催にあたり多大なご貢献をいただいた
宮川和芳部門長をはじめとする日本機械学会・流体工学部門関係各位、
天野嘉春支部長をはじめとする日本機械学会・関東支部関係各位、
流れの夢コンテスト実行委員会、鈴木康方先生、小川雅先生、安炳辰氏
日本機械学会、大黒卓様、熊谷理香様
会場設営等でご活躍いただいた早稲田大学と日本大学の学生諸君
日本機械学会会長・加藤千幸先生
そして何より主役である夢コンテスト参加全チームの学生さんと、指導教授・関係各位
に心より御礼申し上げます。

更新日:2022.10.27