部門賞

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第89期 (2011年度)流体工学部門 部門賞

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部門賞


小森 悟(京都大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,特に,気液二相流,密度成層流,反応流における乱流輸送現象に関して独創的な研究を行い顕著な業績を挙げた.また,部門長として流体工学部門の発展に多大なる貢献をした.

受賞のコメント:

 この度は,流体工学部門賞を賜り,大変光栄に存じます.推薦者ならびに関係各位に厚く御礼を申し上げます.また,私を教育研究者の道に導いていただいた恩師の先生方ならびに私の研究に多大な協力をしていただいた教え子の皆様にも心より御礼申し上げます.

  私は,大学院生時代から環境中に現れる乱流輸送現象を解明することに興味を持ち研究を始めました.最初の研究は温度成層乱流場の乱流拡散に関する研究で,強い安定成層乱流場では熱が時間平均勾配に逆らって低い方から高い方に輸送される逆勾配拡散現象を見つけて,Journal of Fluid Mechanics (JFM)に投稿したところ査読者全員にあり得ない現象であるとして却下されました.手作りの実験装置で長い間休日もなく徹夜の繰り返しで行った実験結果であるだけにショックでしたが,編者のTurner教授に食らいついて査読者を説き伏せ,投稿以来,約3年を要して論文を初めてJFMに発表できた時の喜びは今も忘れられません.これを経験として,その後も大気や海洋等の環境中に現れる興味深い乱流輸送現象に着目し,その現象の解明とモデリングに粘り強く取り組んできました.

  これまでの研究課題は,上記の密度成層流の研究に加えて,気液界面下での乱流場のダンピング現象および気液界面を通しての熱と物質の輸送機構の解明,化学反応を伴う乱流場での混合反応機構の解明,固体粒子及び液滴の飛散機構の解明などであり,幸いにもこれらの現象はスケールの違いこそあれ環境中にも工業プロセス中にもどちらにも見られる応用性のあるものであったため今なおこれらの基礎研究を拡張しながら続けることができております.

このような研究を自由に行うことができたのも国立公害研究所,九州大学,京都大学勤務時代の恩師および上司の先生方や当時の学生さんのサポートのおかげですが,もう一つ大きな力として研究費申請等において大変お世話になった流体工学部門の存在があります.私が機械学会の会員になったのは,わずか15年ほど前ですが,流体工学部門の皆様には私のような新参者も分け隔て無く公平に扱っていただき,また,部門長までをもさせていただくなど,流体工学部門には他のところでは見られない懐の深さを感じるものがあります.この度の部門賞の受賞に対しまして,流体工学部門の皆様方に厚く御礼を申し上げるとともに,流体工学部門が今後も重鎮や学閥が仕切ることの無いいつまでも開かれた部門であり続けることを願って私の受賞コメントとさせていただきます.

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武田 靖(北海道大学名誉教授)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,超音波ドップラー法の発展に国際的に貢献し,超音波流量計の開発と乱流遷移測定の研究に顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度は,栄誉ある流体工学部門 部門賞をいただき大変光栄に思います.これまでの私の研究活動は,多くの方々とのインタラクションから進められてきたことであり,その方々を含めた一同への評価をしていただいたものと思います.特に、ヨーロッパ・スイスで始めた超音波を使った流体測定法の開発と発展は,日本の若い研究者との連携がなければ実らなかったものです.その意味も含めて,代表として多くの方々にお礼を申し上げたいと思います.

 超音波ドップラー法流体分布測定法は,研究開始当時,一般流体力学研究には使われていませんでしたので,液体金属流動の測定法として取り組んだのが最初でした.しかしこの測定法が,それまでの点測定とは異なる線測定法であり,流動場の時空間測定への計測技術の進展の必然的な方向であろうと確信して研究を行ってきました.その結果,多くの流動場へ適用されることとなり,測定法の大きな変革の先鞭をつけることができたと自負しております.またその特徴を生かして,時空間周期性が強いテイラー・クエット流れにおける乱流遷移の実験研究も行うことができました.つまりこの測定法の完成によって,遷移過程を定量的に捕捉・検討することが可能であることを示すことができ,いわゆるソフト乱流の議論を展開することとなりました.また使われている流動場の形態も,惑星・地球物理研究における液体金属流動計測には欠かせないものとなり,さらには実験室での流体力学研究だけでなく,環境・土木といった大きなスケールのものからマイクロフルイディックス内の流動といった小さな場の測定,食品等のレオロジー測定,あるいは流速分布測定による配管内流量の超高精度測定や過渡流量の測定といった工業の基盤技術にまで応用されるようにまでなりました.

 これらの果実は,上記のように,日本からスイスを訪れてくれた若い学生やPDの人たちが大きく前進させてくれたものです.彼らが日本にもどり,私も最後の10年間は日本で活動をともにすることができて,この測定法が現在では日本がけん引役になって世界的に確立されているのを見ることができるのは,大変うれしいことです.その意味で,研究者の育成にも多少はかかわれたことをとても誇らしく思っております.

 これまでにこのようないろいろな活動を支援してくださった多くの友人・先輩にも,改めて心からの感謝の意を表したいと思います.

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山本 勝弘(早稲田大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,流体過渡現象,気液二相流の非定常現象ならびに高速水噴流に関する研究を行い顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 この度流体工学部門賞をいただくこととなり,望外の喜びです.年の功という言葉がありますが,特筆すべき功がほとんどないまま齢を重ね,このような栄誉ある賞をいただくこととなり大変戸惑いを感じました.しかし,工学・技術は一人でなし得ないという思いから,気を取り直し有難く受けさせていただくことに致しました.これまでにご協力,ご支援いただいた多くの皆様に深く感謝を申し上げます.

  これまで取り組んできた研究テーマは流体工学のうち歴史が古く狭い分野ですが,関連する科学・技術の発達および自然環境や社会システムの変化により,取り残された問題は複雑でブレークスルーを必要とする難問も少なからず存在しています.このような状況の中で大学における研究は,共同研究やプロジェクト研究を通じて社会の技術課題を知り,目先の解決よりもその背後にある問題の本質を明らかにすること,そして技術の活用と伝承のために,その結果を分かりやすく使いやすい形に整理することも重要な仕事と考えております.

  今日流体工学の問題解決に実験,理論,計算の3要素が必要なことに異論はないと思われます.しかし,研究を担う若い人たちにとって,高度に専門化したそれぞれの方法を短期間で1つでも修得し使いこなすことは容易ではありません.大学では教育と研究は車の両輪と言われていますが,両者のレベルの差は大きく,ギャップを埋めるのは大変難しいのが実情です.若い人たちが目を輝かせて問題に取り組めるよう日々腐心しております.

 最後に機械工学に携わってきたものとして,今回の大震災とりわけ原子力発電の問題に触れないわけにはいきません.技術には日々の積み重ねが大切なことは言うまでもありませんが,明日をのみ思い煩う営みでは短期的な問題解決に追われ,中長期の展望を見失いがちです.今回の出来事を冷静に分析し,社会における科学・技術の役割を異なる次元から考え直し伝えることができれば,それに勝る年の功は無いと思う次第です.

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塚本 寛(北九州工業高等専門学校)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,ポンプの非定常運転時特性や動静翼干渉などの非定常流動現象に関する研究を行い顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 名誉ある流体工学部門賞を受賞し,大変光栄に存じます.これまで,ご指導頂いた先生方,共に研究に取り組んで頂いた皆様方,ならびに,今回ご推薦賜りました関係各位に厚くお礼申し上げます.

  研究テーマのリスト中の「ターボ形ポンプの動特性」に導かれるまま大橋秀雄先生の研究室にお世話になって以来、ポンプに係わることになりました.それまでNavier-Stokesの式もよく知らなかった私は,研究室に入ってからの半年間,一生で一番勉強したと思っています.その駆動源が,研究室の同期生と始めたSchlightingのBoundary Layer Theory の輪講でした.流体に関する基礎知識がほとんど0だったので,皆に追いつくために勉強せざるを得なかったのです.

  先輩の研究を引き継いで「遠心ポンプ始動時の過渡性能」を研究することになり,1秒以内に実験が終わってしまう過渡現象の計測と解析に悪戦苦闘したのは今でも忘れられません.瞬時に立ち上がる回転数,圧力,流量の非定常計測には随分苦労しましたが,その経験は,その後の研究で大いに役立ちました.何とか学位取得に漕ぎ着け九工大に職を得てからも,始動・停止や流量急変のような過渡運転時のポンプ特性に取り組み,キャビテーション時も含め,過渡現象の複雑さに悩まされました.でも,新しい計測技術や解析技術の助けを借りつつ研究室が進化していくのは楽しいものでした.

  その後,ディフューザポンプの動静翼干渉問題を研究し始めた頃,新しい研究科の創設に係わることとなり,研究以外のことに時間を取られ大学での生活は一変しました.しかし,研究室の学生諸君が実に良く実験や計算をしてくれ,お陰で流体工学部門の講演会では毎年欠かすことなく発表できたのは良い思い出になっています.移籍した生命体工学研究科という新設研究科に見合うテーマと言うことで始めたマイクロポンプや血液ポンプに関する研究も,実に協力的かつ精力的な学生諸君のお陰で望外の成果を収めることができました.結局,ポンプに係わる非定常流れを追い求めてきたことになりますが,良き協力者に恵まれ楽しい研究生活を送ることができました.今は研究のできる状況ではありませんが,またポンプに関する研究に係わりたいと思っています.

 これまでご指導,ご鞭撻頂きました皆様方に,改めて心から感謝の意を表したいと思います.

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古川 明徳(九州大学)

受賞理由:

 長年にわたり流体工学分野の教育と研究に従事し,多くの技術者の育成と流体工学の発展に多大な功績があった.特に,ポンプの二相流問題ならびに水力エネルギーの有効利用に関する研究を行い顕著な業績を挙げた.

受賞のコメント:

 このたびは日本機械学会流体工学部門賞を受賞させていただきましたこと,誠に光栄に存じます.ご推薦下さいました関係各位に厚くお礼を申し上げます.

 私の研究のスタートは,約40年前の学部4年次での蒸気工学の研究室で「単一気泡形成」に関する卒業研究でした。大学院進学時にそのまま同じ研究室に配属されていましたら,その後は原子力の道に進んでいたかもしれません.しかし希望とは裏腹に「流体機械工学」の研究室となり,以来,今日まで「ポンプのキャビテーションと二相流問題」は私のライフワークになりました.また,水力エネルギーの有効利用に関する研究は,1970年代の第一次オイルショックの化石燃料の枯渇に端を発したものですが,時の経過ともに二酸化炭素排出に伴う地球温暖化が問題となり,再び「再生可能エネルギー」として脚光を浴びて今日に至っております.

  これらの研究に着手しました折には,今日の「流体工学部門」も「流体工学・流体機械(流工流機)委員会」と称され,数多くの先生方がポンプや水車の研究に従事されておられ,活発な議論をさせていただきました.それが今日では「ポンプ・水車は成熟した機械」との世間での認識があるためでしょうか,後進の先生方の研究対象から外され,私共は「絶滅危惧種」となってしまいました.私の研究動向に対する鈍感さが意図しないところの「オンリーワン」となり,今日ではアチコチから技術相談を受けるようになりました.このような状況ですから,今後はどなたがこの種の技術相談を受けて頂けるのでしょうかと心配になってしまいます. 

  そのようななか,このたび「ポンプや水車」といった流体機械分野の研究を行って参った私共に日の目を与えてくださいましたことを,大変うれしく思います.恩師の高松康生先生(九大名誉教授)や妹尾康利先生(九大名誉教授)からの数々のご指導,そして長年,私とともに研究に取り組んでいただきました数多くの諸氏に深く感謝を表します.流体機械の研究は決して一人ではできません.機械研究者に求められるチームワークのお陰であります.

  賞を頂戴いたしましたことを機会にますます研究に精進致し,皆様方とともに「流体工学・流体機械」の発展に貢献して参りたいと存じます.

 このたびは本当に有難うございました。

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更新日:2011.8.25