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第96期 (2018年度)流体工学部門 一般表彰(フロンティア表彰)

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一般表彰(フロンティア表彰)


小野 謙二(九州大学)

受賞理由

 流れ場の大規模シミュレーション解析,ならびに本解析に必要な高性能並列計算手法の発展において優れた業績を多数挙げ,計算流体工学分野の発展において先駆的,主導的な役割を果たしてきた.

受賞のコメント

 この度は、栄誉ある流体工学部門一般表彰(フロンティア賞)を賜り、大変光栄に存じます。ご推薦いただきました方々や、ご指導・ご助言を下さりました先生方に深く御礼を申し上げます。

 今回の受賞理由となりました大規模シミュレーション解析・高性能並列技術による計算流体工学分野への貢献についてですが、これまで取り組んで参りました計算手法・ソフトウェア研究開発の成果を評価いただき、大変嬉しく思います。日本を代表するスパコン「京」や、現在取り組んでおりますポスト「京」の性能を引き出す計算アルゴリズム開発やソフトウェア開発に携われたことは貴重な経験となりました。「京」を用いて数百億規模の自動車周りの流れを計算するための自動格子生成法、スケールする並列アプリを記述する領域分割管理ミドルウェア、「京」の全系を使ってレンダリングできる可視化システムの設計開発など、計算流体力学の高性能計算に関するシステム化の研究は、流体工学分野だけでなく、HPC、可視化、情報系分野の方々、またエンドユーザの皆様との議論や交流から派生しました。異分野の方とのコラボレーション、また、企業・国研・大学など様々な立場での研究においては、それぞれのコミュニティの文化や研究を取り巻く環境が異なり、とまどいもある反面、新鮮な驚きもあり、その度に刺激を受けてきました。

 数年後に登場する潤沢な計算能力をもつポスト「京」の時代には、ものづくり分野では多数の計算結果を利用した設計、材料分野では機械学習を活用した設計など、従来とは異なるスパコンの利用法に期待が寄せられています。さらに、Society5.0の潮流では、現実の社会問題に対するICT技術を用いたソリューションの社会実装・実装の動きが加速し、流体アプリケーションも重要なコンポーネントの一つとして活用されることとなるでしょう。これから、流体工学分野の他領域との融合連携により適用範囲を拡げ、オープンサイエンスの取り組みを通して、さらなるフロンティアの開拓に向けて貢献できるように努力していきたいと思います。

 さいごに、これまでご指導頂いた先生方に厚く御礼申し上げますとともに、一緒に研究を進めてきた方々、研究をサポートしていただいた方々に感謝いたします。

一般表彰(フロンティア表彰)


岩本 薫(東京農工大学)

受賞理由

 高レイノルズ数乱流場における乱流制御効果を理論的に明らかにし,高い抵抗低減効果を有する独自の生物規範型の制御手法を実証するなど,学際的領域を含む広範囲な流動制御分野において先駆的・先導的な役割を果たしてきた.

受賞のコメント

 この度,流体工学部門・一般表彰(フロンティア表彰)を賜ることになり,大変光栄に存じます.ご推薦を頂きました方々ならびに関係各位に厚く御礼申し上げます.

 乱流研究は100年余りの歴史があり,古典物理学に残された最大の課題と考えられています.特に乱流制御によってもたらされる新技術開発・環境問題軽減への大きな期待があります.私は,壁乱流の世界最大の直接数値シミュレーションを実施し,乱流制御の実用化において最も障害となるスケールアップ問題(レイノルズ数依存性)を明らかにしました.高レイノルズ数乱流場においても壁面近くの乱流輸送が摩擦や熱伝達の支配要素となることを簡明な理論を用いて解明しました.その後,従来困難であった高レイノルズ数乱流場でも高い制御効果を有する独自の乱流制御手法を考案・実証し,乱流制御の実用化に貢献することができました.

 今回の受賞を励みに,今後も引き続き,各種高速輸送機器や流体機器等の重要な技術課題である高効率化と低環境負荷化に寄与し,近年の地球環境問題を解決する一助になるよう,また流体工学部門の発展に尽力して参りたいと考えております.

 最後に,本受賞の基である博士論文を指導して頂きました東京大学・名誉教授の故笠木伸英先生に心より感謝の意を表します.

更新日:2019.10.30